第199話  ワレスさん戦!1

文字数 1,602文字



 でも、まだまだステータスをじっくりと見る僕。しつこくって、すいません。

 現在のワレスさんの職業は聖騎士。
 職業スキルは、これまたアレコレいっぱいついてるんで、詳しくは書かないけど、軽鎧、重鎧、盾、かぶと、ローブ、剣、短剣、杖、楽器装備可能など、ほとんどの装備品を現在の職業に関係なく着用できる。

 MP吸収30%とかもあるな。
 これは、敵から受けた攻撃魔法に使用されたMP30%を吸収するという、痛ければ痛いほど嬉しいスキル。スズランも似たようなスキルを持ってたから、魔法使い系の職業をマスターすると持てるようだ。

 一つ、気になった。

「なんですか? この自己流詠唱可能って?」
「それは戦ってみればわかる」

 ごもっとも。

 あとは個人的な得意技だ。
 ミラーアイズ
 カリスマ
 古の血
 呪い持ち
 超絶美形

 あはは。僕の考えた設定どおりだ。
 得意技までカッコイイよ。
 僕の得意技、小銭拾い、つまみ食い、泣きマネ……いいもんねぇ。小説書けるから、いいもんねぇ。

「呪い持ちっていうのは?」
「おれの愛した人は、みんな死んでしまうんだよ」
「やっぱり!」

 すいませんね! 過酷な運命、背負わせました!

「やっぱりって、なんだ?」
「あっ、なんでもないです。すいません」
「ふうん?」

 あっ、そういう疑いの目で見ないでね。

「ちょっと仲間と作戦練ってもいいですか?」
「いいよ」

 どこまでも寛大だなぁ。
 この人、もしかして、ミラーアイズの特技で、こっちの数値が見えてるのかもしれない。

 ミラーアイズはワレスさんの最大の個性だ。本編シリーズのネタバレにつながるので、あんまり説明できないんだけど、彼は遺伝的に鏡のような特徴を持つ瞳を生まれつき有している。
 それは相手のかけてきた魔法をはねかえしたり、いわゆる透視のようなことができる目だ。このミラーアイズは時間軸を内包しているので、時間魔法もあやつれる。

 その特徴をこのゲーム世界にあてはめると、透視能力は相手のステータスを見やぶる力だろう。ぽよちゃんの聞き耳の感度のいいやつみたいな。
 さっき防御魔法と言ってたのは、たぶん、攻撃魔法をはねかえすシールドだ。これはホワイトドラゴンが使ってた魔法シールドと同じか、似たような技だ。
 ワレスさんの得意技レベルは全部ランク5まで到達してる。とすると、時間軸も使えるな。
 こっちの時間を止めたりするのかな?

 ああ……自分で考えたキャラとはいえ、敵にまわすと怪物じゃないか。
 勝てる気はまったくしない。
 せめて、ワレスさんが言ってたように、3ターン耐えることができるかどうかだ。それも難しい気がするけどね。

 僕は仲間と頭をつきあわせて、小声でささやきかわした。

「ワレスさんの素早さは、流星の腕輪をつけたロランを上まわってる。てことは、僕らの平均の五倍は速いから、五回連続攻撃してくる。へたすると六回。六連続で最強魔法使われたら、1ターンで全滅だね」
「レベルが30近く違うだもんね」
「うん。でも、なんとか一矢むくいたいよねぇ。だから、最初の1ターンが勝負だね。2ターンめはないよ。ワレスさんが手心をくわえてくれたら話は別だけど。みんな巻きや、はねるで素早さ上げても焼け石に水。六回攻撃を五回に減らせるていどかな。だから、こっちは最初のターンで全力攻撃するしかない。アンドーくん、現状で使える最強魔法は?」
「燃えつきろ〜が使ええようになったけんね」
「じゃあ、アンドーくんは燃えつきろね。僕とぽよちゃんは通常攻撃。たまりんは『呪ってやる〜』で。あれってたまに相手の動きを1ターン止めるよね。それに賭けるしかない」

 そのとき、僕は気づいた。

 あれ? アンドーくん、火属性最強魔法使えるようになったんだ?
 僕とアンドーくんって、同じときに転職して、同じ回数だけ戦ってるよね?
 もしや、もしや……?

 僕は自分のステータスを見なおした。
 そして、ニンマリ笑った。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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