第49話 なにやら陰謀っぽい?

文字数 1,617文字



 ああッ! 言いやがった。
 死んじゃえって言いやがったよ、コイツぅー!
 聞いた? 聞いたよね? お母さーん!

 あっ、すいません。パニクりすぎて、なんか変なこと口走った。

 僕らは息をのんで、そのときを待った。
 一分。二分……。
 ん? 何も起こらない?
 いや、違う。
 ぽよちゃんが、ぽよちゃんが、またもや棺おけにィー!

「ぽよちゃーん。ごめん。ごめんよ。あとで必ず生き返せてあげるからねぇ」
「ぽよぽよは即死系魔法に弱いからな」と、猛。

 そうか。魔法との相性もあるんだ。

「あと、幸運が高いほど、即死魔法が効きにくい」

 ん? 幸運が高いほど……。
 むむむ。むむむむ。
 それは、つまり、今の僕なら、ほぼほぼ効かないって意味じゃないか?
 僕の幸運度マックス手前1。

 たいていのゲームではさ。
 レベル上限まで上げても、幸運の数値がマックスまで上がりきることってないんだよね。たいていは上限の三分の一ていどまで育てばいいほう。
 で、種系の数値あげるアイテムは希少だから、上限に達するまで上げることは、まず不可能。
 しかるに今の僕はカンスト一歩手前。

「ねえ、ロラン。シャケ。なるべく、あいつの詠唱が聞こえないくらいのところまで下がってて」
「え? なんでですか?」
「つねに僕がターゲットになれば、即死することはないと思う。こいつの魔法は、まだ単体だ。全体魔法じゃないから。二人は遠距離から援護してよ」
「でも……」

 と言ってから、モニターをながめた蘭さんと三村くんは絶句した。

「な、なんや。かーくんのこの数値!」
「いつのまに?」
「へへへぇ。いいでしょ?」

 というわけで、僕が矢面に立った。
 攻撃は蘭さんの『燃えろ〜』と、なかなか当たらない三村くんのブーメラン。それに僕の『破魔の剣〜』だ。
 チマチマとミミックの体力をけずりとり、ようやく倒すことができた。
 その間、十回は即死魔法をあびたが、僕は一度も死ななかった。


 *

 チャリーンと音をたてて、ミミックがくずれおちた。ふたのすきまから千円硬貨と小さなコインがこぼれてきた。

「ああっ、小さなコインだ〜。これ、ちょうだい? お金いらないから」
「ええで」
「ええ、まあ。僕もそういう気長にコツコツ集めるの、性分じゃないんで」

 あはは……現実の蘭さんは超お金持ちだし、こっちの蘭さんも王子様だもんね。手に入らないものなんてないか。

 僕が小さなコインをひろってミャーコポシェットに入れていたときだ。
 なにやら人の話し声が聞こえた。

「ほんとに、こっちで間違いないのか?」
「この洞くつを出たところに峠を越える道があるはずです」
「早く国境を越えないと、追っ手がかかると面倒だからな」
「まったく、ブラン王もムチャをおっしゃる」
「おっと、その名をここで出すな。誰が聞いてるかわからないぞ」

 そのとき、僕らはちょうど、ミミックが宝箱のふりをしておさまっていた、岩壁のくぼみの部分に入りこんでいた。だから、僕らの姿はその会話の連中には見えていなかっただろう。無人だと思って、安心して秘密の話をしているのだ。

 それにしても、会話を聞いた蘭さんの顔色が青い。ハッと小さく息を飲む音が聞こえた。

 待てよ? ブラン王……どこかで聞いたことがあるような?
 ロラン、ブラン……そうか!
 この世界での蘭さんのお兄さんの名前だ。
 まさか、こんなところでお兄さんの名前を聞くなんて。

 僕は心配になって、岩壁の端っこから、ちょっとだけ顔を出してみた。
 前方のT字路のようになった、つきあたりの部分を、男が二人歩いていく。
 だが、それだけじゃない。
 二人は女の子を一人つれている。
 どうやら、女の子はロープで縛られた上、さるぐつわで口をふさがれている。

 人さらいだ!
 ブラン王の陰謀なのか?
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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