第279話 ガブキング戦!2

文字数 1,300文字



 見てると、ガブキングはテディーパパのラッシュをシュッ、シュッと右に左にかわしている。
 は、速い……。
 テディーパパだって、素早さ150だよ? けっこう速いほうなんだけど。

 イヤな予感はそのまま的中した。
 僕らの攻撃がすべて終わって、ガブキングのターンだ。

 どんな攻撃をしてくるんだろうと息を飲む僕らの前で、ガブキングはたくさんの触手を自分の体にグルグルに巻きつけた。

 な、何が起こるんだ? ゴクリ。

 次の瞬間、触手が離れると、ガブキングの体はコマのように超高速で回転した。
 あっ! まさか、これって『巻きで行こう〜』なのか? 巻いてるもんな。触手。
 もしかしたら、この回転数だと、『もっと巻きで行こう〜』か、さらにその上の上級魔法なのかもしれない。
 巻きで行こうを文字どおりの意味でとらえると、こうなるのかっ!

 ヤバイ! これまで、蘭さんより素早い敵に出会ったことなかったから、どんなふうに戦っていいのかわからない。

 いや、そういえば、ワレスさんと手あわせしたことがあった。
 ワレスさんは僕らの五、六倍は速かったよね。ただし、手かげんしてくれてたんだよな。直接攻撃してこなかったし、弱い魔法から、じょじょに強い魔法に移行していった。
 だから、なんとかこっちも、つけいるスキがあったんだけど。

 ガブキングは僕らに手かげんする気なんて、毛頭ないみたいだ。
 回転の勢いで、そのまま無数の触手をムチのようにふりあげ、乱打してくる。

「うわ。うわ。うわ」
「イタタ。やらいたわ」

 ムチの雨あられ〜
 えっ? 喜んでないよ?
 〜をつけると、なんでも楽しんでるみたいに……。
 ビシバシと鞭攻撃が頭上からふってくるんで、僕らは逃げまどった。
 すごい数とんでくるのは、たぶん、ガブキングが複数回の攻撃してるせいだ。
 思ったとおり、めっちゃ速い。
 ガブガブはされなかったけど、それなりに痛かった。

「ん? テディーパパが倒れてる……」

 厳密に言えば、立ったままプルプルしてる。どうやら動けないようだ。

「マヒ攻撃だ! さっきの触手の雨あられ。マヒ攻撃だったんだ」
「わたしが治します!」と、スズランが言った。NPCだから、たまにしか動いてくれないけど、よかった。ここはスズランに任せよう。

 スズランは僕らの順番に左右されないようで、「しびれよ、消えろ〜!」と叫んだ。

 テディーパパのプルプルは止まったけど、でも、状態異常がかかるのはよくないな。クマりんもマヒ耐性がない。
 耐性があるのは、たまりんとケロちゃんだ。ケロちゃんはバランの薔薇なしで使えるレベルじゃない。まだレベル7だ。

「クマりん。たまりんと交代してくれる? たまりんは海鳴りのハープね」

 素早さに特化してるせいか、ガブキングの攻撃は、それほど大ダメージじゃなかった。三ターンに一回、回復できる海鳴りのハープの効果で充分だろうとふんだ。

 クマりんはしょうがなさそうに馬車へ帰っていった。でも、テディーパパはその場に残った。
 へぇー。呼ばれた仲間って、呼んだ当人が戦闘離脱しても援護として残るんだ。新たな知識!

 それにしても、どうしよう?
 まったく戦法が見えてこない……。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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