第77話 いでよ、クリティカル!

文字数 927文字


 さて、僕らの攻撃だ。
 蘭さんは「元気になれ〜」で自分のHPを回復した。MP温存のためか、そのあと、防御行動をとる。

 あっ、よく見たら、行動の選択肢に、“身を守る”ってのがある。
 今まで、よく見てなかった。
 たたかう、身を守る、魔法、得意技、アイテム、逃げる、だ。

 蘭さんは三回、防御したから、ちょっとだけ回避率が上がってる。
 そうだったのか。知らなかった。
 やっぱり、ちゃんと戦闘訓練受けないとダメだなぁ。
 シルキー城の兵士訓練所、もっと活用しとくんだった。

 そのあと、三村くんが破魔の剣をふりかざした。
「破魔の剣〜」

 ちっちゃい炎が火の玉を襲う。
 あんまり効果なさそうだ。
 もしかして、装備品魔法も使用者本人の魔力の高さが関係してるのかな?
 だとしたら、ふだんは僕が持ってるほうが正解なのか。

 ぽよちゃんは、まだ“ためる”。ためるよ。ためるの好きだからね。
 僕も小銭ためるのは好きだ。
 ぽよちゃんの気持ちはよくわかる。

 よしッ。次こそは僕の番だ。
 どうか、クリティカル出ますように!

 僕は思いきって鉄のブーメランをなげた。
 ヒュルヒュルヒュルと気持ちのいい音を立てて、ブーメランが風を切る。
 どうだ? クリティカルか?
 行け! 僕の(じゃないけど)ブーメラン!

 ヒュルヒュルヒュル——
 スカッ!

「えっ? スカッ?」

 は、外れたー!
 ありえない。
 これってほんとに幸運度ほぼマックスって言える?
 二回に一回は出るクリティカルが、肝心なときにで……出ない。
 今、出ないでどうするよぉー!
 うう、みじめっ。

 ど、どうしよう。
 カボタンに憑依しちゃったら。
 蘭さんだけは助かるだろうけど、次のターンで蘭さん一人で倒せる保証はない。戦闘離脱も必ず成功するかどうかはわからない。

 そ、そうだ。魅了だ。蘭さんの魅了(100%)なら、必ず勝利できる。
 でも、ここ、森のなかだけど、そのあと蘭さん一人で神殿まで無事に帰れるかな? 危険察知能力があるとは言え。
 僕の棺おけのなかから旅人の帽子を使って、装備魔法を使うことできるんだろうか?

 ハラハラしてた僕だったが、とつぜん、思ってもみないことが起こった。

 夜の闇を切りさいて、白い火炎がまっすぐ火の玉にむかっていった!
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み