第289話 メロンソーダ味のスライム

文字数 1,341文字



 プルプルふるえるエメラルドグリーンのスライム。
 つぶらな瞳で可愛いなぁ。
 つまみ食いしちゃって、ごめん。

 森スライムはとつぜん、うにょんと伸びた。風船のようにふくらんで、変な形になっていく。

 あっ、思いだしたぞ。
 変身って技。
 そうだ。いっしょに出現した仲間モンスターの姿に化けるんだ。前に虹の谷にいた水スライムも使ってた。姿だけじゃなく、魔法やスキルなんかもマネするんだよな。

 森スライムが変身したのは、オラタンだ。澄んだエメラルドグリーンのオランウータンのできあがりだ。

「忘れてたよ。化けるんだった」
「オラタン、さっき行動パターンを見る前に倒しちゃったから、どんな技を使うのかわかりませんね」
「そうだね」

 話してる目の前で、森スライムの化けたグリーンオラタンは、「ヴォーッ!」と両腕をあげて叫んだ。

 うわッ。デッカイ声。ビックリした。
 あっ! ぽよちゃんが急にビクッとすくみあがった。そして、馬車にむかって走りこむ。

「ぽよちゃん?」

 見れば、ぽよちゃん、すっかり耳をふせてブルブルしてる。
 おびえだな。ステータス異常に、おびえってのがあった。
 以前、僕が動く死体に幻覚を見せられたときにかかったのも、この“おびえ”だったんだと思う。

「しょうがないね。他のメンバーで戦おうか。ロランの次の攻撃でやれるんじゃないの?」

 しかし、蘭さんは考えこんでいた。

「ねえ、かーくん。変身って技、パーティーの仲間の能力をそっくり写しとることができるんですよね?」
「そうみたいだね」
「じゃあ、僕らの仲間になれば、僕やかーくんの魔法や得意技もマネできるってことじゃないですか?」
「ん? それって……」

 もしかして、蘭さんのブレイブツイストや、みんなありがとうを使えるってこと?
 僕の傭兵呼びやつまみ食いや、なんならアンドーくんの隠れ身やトドメ、ケロちゃんのターン開始時自動石化とか?
 そんなの…………最強じゃないかッ!

「ロラン! 森スライム、仲間に欲しい!」
「ですよね!」

 次のターン。
 蘭さんの魅了が炸裂した!


 チャラララッチャッチャー!
 オラタンを倒した。
 火の玉(グリーン)を倒した。
 森スライムを倒した。
 戦闘に勝利した。
 経験値360を得た。
 270円を手に入れた。
 モンスターは宝箱を落とした。
 森の樹液を手に入れた。
 火の玉(グリーン)の記憶を手に入れた。
 森スライムが仲間になった。


 森の樹液というのは、琥珀(こはく)のことだ。おびえを無効にするようだ。ぽよちゃんは聴覚がいいから、大きな音がキライなんだな。あとで合成屋に行って、精霊のアミュレットにひっつけて、これをぽよちゃんに持たせよう。

 それより何より、森スライムがプルプルしながらついてくる。

「たのもしい仲間がまた増えたね!」
「あっ!」
「どうしたの? ロラン?」
「魅了のランクが上がりました! 魅了100%になったから、これ以上、成長しないのかなと思ってたけど。よかった……」

 どれどれ。
 蘭さんの得意技。

 魅了(ランク4)
 戦闘中、魅了状態になった敵を自由にあやつることができる。
 ただし、あやつられた敵モンスターは戦闘後、『ストーカー製造機』の影響を受けない。ボスにも有効。

 おおっ、ついにモンスターをあやつることができるように。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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