第343話 伝説の力
文字数 1,707文字
まるで消防車から散布される放水ポンプー!
ブッキーたちを次々、水びたしにして撃ち落としていく。
赤いブッキーたちは火属性だから、とくに水の攻撃に弱い。みごとに弱点をついてる。
「ハハハハハ。どーだー。伝説の鍛冶屋の力は〜」
陽気なおじさんだなぁ。
「えーと、これは?」
「わしの得意技、鍛冶のなかの一つ『冷却水』だ。鉄は早いうちに打て! そして冷やせ!」
「ありがとうございます! おかげで助かりました!」
「ハハハー。礼にはおよばんよ。牢屋から出してもらったからな」
ブッキーたちはいっきに六十も減った。ダディロンさんの冷却水は全体攻撃のようだ。おじさんを前に出しといて、よかった。
本のオバケは残り二十か。
「作戦変更! ぽよちゃんとケロちゃんもブッキーを倒して!」
「キュイ!」
「ケロ!」
ぽよちゃんの爪が赤い本を青く切りさく。三体、落ちた。
ケロちゃんは一匹だけ。
ゴトリと本が石になる。
ブッキーは十六体まで減った。
一人が四発、燃えろ〜をくらうとして、ケロちゃんでもギリギリ持つだろう。ケロちゃんは炎シリーズでそろえて着てるから、火属性ダメージは40%軽減されるしね。
モンスターのターンだ。
あんまり、ケロちゃんに攻撃が集中しませんように!
ん? ターンが敵に移った直後に、サラマンダーの体が赤く光った。
あたりに熱風が吹く。
なんだ、これ?
「うーむ。サラマンダーの火の結界だな」と、ダディロンさんがつぶやく。
「火の結界って、ターゲットが逃げられなくなる技じゃないんですか?」
「うむ。そうだ。自分のまわりに結界を張って、対戦相手を逃げられなくする。その上で、結界内に火属性攻撃の威力を倍増する風を起こすんだ」
「ええー! ダメージ二倍? ヤバイんですけど」
二倍にダメージがはねあがるとしたら、ケロちゃんはまちがいなく、コロリ。ぽよちゃんもギリでもたないかも。HP160だから。
計算が……僕の計算があわなくなるー。
「よし! 僕が狙われる! アンドーくんとたまりんは回復よろしく」
僕はなるべく狙われやすいように、敵のまんなかに立ちふさがる。
なのに……なんでだ?
「ギイギイィーキキー」
サラマンダーがなにやら唱えると、ブッキーたちがいっせいに僕を飛びこえていくじゃないか。
なんでだ! 僕を狙ってくれー!
ブッキーたちは、どうやらケロちゃんに的をしぼった。丸く円を描いて、ケロちゃんをとりかこむ。
「ケロケロ……」
もともと緑だけど、ますます青くなるケロちゃん。
どうやら、サラマンダーがパーティーのリーダーで、ケロちゃんを狙い撃ちにしろと命令したようだ。
モンスターなのに帽子かぶって、ちょっとカッコつけてるもんな。知力高い系だったか。
僕は急いで走って戻った。
「ケロちゃん!」
「ケロケロー!」
助けてェ!——と言ったらしきケロちゃん。
ああ、でも、ブッキーたちが炎のかたまりを放った。
燃えろ〜にしては大きい。
火の結界のせいで、燃えろ〜だけど、もっと燃えろ〜くらいの火力になってる。
このままじゃ、まにあわない!
最初の火炎がケロちゃんを襲う!
……ところがだ。
「あれ?」
ケロちゃんの体がふんわり青く光ると、火炎はかき消えた。
続いて二発、三発、少し遅れてさらに六発の火の玉。
しかし、それも、すっ、すっと消える。
何が起こったんだ?
わかんないけど、助かった。
残りの火炎は僕が自ら受けとめにいく形で、ケロちゃんにダメージが行かないようにする。
「アチチ……でも、このくらいなら、かすり傷だ。ケロちゃん、大丈夫?」
「ケロケロ〜!」
「あはは……なめないでね」
石化舌の愛情表現……。
ブッキーたちは無念そうに飛びさっていった。
サラマンダーの剣の攻撃は、僕が盾で受ける。盾越しだけど、ちょっとジンとしびれる。
サラマンダー、強いなぁ。
仲間になったら頼もしいんだけど、今は蘭さんがいないからな。
そのまま、今度はこっちのターンだ。
サラマンダー隊長が逃げだす前に、ケロちゃんの自動石化攻撃が発動した。
ペロリン〜!
ああ、サラマンダー。石になったよ。
石化に弱かったんだね。
だから、ケロちゃんを狙ったのか。