第211話 剣の舞、おぼえたい
文字数 1,639文字
「わあっ。スゴイ! 攻撃が速すぎて見えない! 通常攻撃だったはずなのに、なんで四体同時に倒れたんですか? 装備品が全体攻撃可能なやつですか?」
クルウはひかえめに微笑んでる。
僕ならめっちゃドヤ顔するけどね!
「剣の舞は通常攻撃をつねに全体攻撃にしてくれます」
「いいなぁ。なんの職業につけば覚えられるんですか?」
「武闘王のマスタースキルです」
「武闘王になるには、どんな職業を学んでいけば?」
「戦士、武闘家、騎士を得ての武闘王ですね。重騎士はさらにその上の上級職です」
「ワレスさんは聖騎士でしたよね?」
「聖騎士には僧侶をマスターしてからでないとなれないのです。私には魔法の才能がないので」
「なるほど」
もしかして、この世界にはたくさん職業があるかわりに、個人によってはなれない職業もあるのかな?
全職業制覇ってわけにはいかないのか。ちょっと残念。
戦闘が一瞬で終わってしまったので、僕らはガラガラと無人の街道を進んでいく。
のどかな風景なのに誰もいないのって、なんか不気味だなぁ。
あっ、またモンスターだ。
今度こそ、僕らが戦おう。
野生のブンブンが現れた。
野生のキノッコが現れた。
野生のバジリスクが現れた。
「よしっ。今度こそ、やるよ。ぽよちゃん。聞き耳」
「キュイ」
敵の数値が怖いほど低いなぁ。
バジリスクとか、攻撃力じたいは30しかない。
ワレスさんやクルウや、強い人の数値を見すぎてしまった。
行動パターンは三村くんの言ってたとおり、バジリスクは石化攻撃。
キノッコは胞子って技を使う。どうやら分身しながら睡眠攻撃をしかけてくる技だ。
ブンブンは刺す……か。
お尻の針で刺してくるんだな。
通常攻撃しかしないのか?
「石化は困るんで、バジリスクは優先ね。キノッコも増えるとめんどうだから、二番めに倒して、最後にブンブンかな」
「了解や」
「キュイ〜」
「薔薇ー!」
ビックリした。
バラン、急に始めたな。
自動発動だから、みんなが行動する前に勝手にやっちゃうってことか。
あたりにいちめん、薔薇の花が咲いて、そりゃもう
おおっ、僕の力が湧いてくる。
蘭さんの『みんな、がんばろ〜』を二回かけられたときくらいの感覚。
反対にバジリスクやキノッコは目をチカチカさせていた。目が見えていない。これはチャンスだ。
これまでの順番だと、ぽよちゃんが最速だったんだけど、薔薇の効果で全ステータスにプラス100されたバランのほうが素早いらしい。バランは二連続で、ぽよちゃんと僕に守るを使った。守るは山びこが使ってた技だよね。対象に攻撃されそうになると、かばってカウンター攻撃するやつ。
そうか。バランも守るが使えるのか。
クルウと同じ騎士だしね。
そういえば離れてたあいだに、バランは強くなったのかな?
ちょっとステータスをのぞいてみる。
レベルは21。
HP250、MP20、力75、体力125、知力55、素早さ80、器用さ55、幸運21。
マジック
ヘッチャラさ〜(*'▽'*)
うわっ。数値たっか。
HPとか、力とか、体力とか、僕より上なんだ。なにげに素早さも速い。やっぱり、黒ぽよに乗ってるからか。
乗りこなすって得意技がランク2に上がってるんで、くわしく見てみると、ためるが使えるようになってた。
ためるは、ぽよぽよの得意技だ。てことは、黒ぽよを乗りこなすことによって、ぽよぽよの使う技を自分も使えるようになるってことか。
聞き耳はパーティーで一人が使えれば充分だけど、二手にわかれるときには、各隊で使えて便利だ。
それに、はねるが使用可能になれば、素早さも上げることができる。
しかもだ。
今はこれにローズクォーツの杖のせいで、毎ターン、もっとがんばろ〜がかかる。ステータスも100ずつプラスされるわけで……5ターンもすると、ワレスさんのステをぬいちゃうんじゃないか?
つ、強い……。
鬼に金棒ならぬ、イバラの騎士に薔薇水晶の杖。