第132話 ギルドも襲撃

文字数 1,778文字


 走りだしてまもなく、僕は気がついた。ぽよちゃんの背中に、なんか乗ってる。よく見ると、コビット族の戦士だ。名前は……えーと……なんだっけ? 前に書いた部分を調べてみないと。

 はい。調べてきました。クピピコだ。

「なんで、クピピコが?」
「クピ! ピコピコ!」
「うーん……」

 コビット語、スズランにしか理解できないんだよなぁ。

「まあいいや。今さら戻れないし。さきを急ごう!」

 めちゃくちゃ強いゴードンに見つからないように、ここは短期決戦じゃないとね。

 街路で見かけるモンスターをすれ違いざまに、なで切るように(ぽよちゃんが)して、僕らはつき進んでいく。

 やがて街の中央広場についた。
 ギルドのなかからも悲鳴が響いている。マズイんじゃないか? ギルドには大切な設備がたくさんある。街のみんなを助けられるのは冒険者だ。その冒険者たちの回復や補充の拠点だ。ここは守っておかないと。

「ギルド、よっていこう」
「うん。行かや」
「キュイ、キュイ」

 ギルドの玄関ホールへとびこむと、何人かの冒険者がモンスターと戦っていた。アクビをしてた受付のお姉さんも、フライパンで見習いガーゴイルと応戦している。フライパン、どっから出てきた?

「お姉さん! ここは任せて。行くよ。みんな!」
「キュイ!」
「あっ。ぽよちゃんが一瞬で倒した……お姉さん。もう大丈夫ですよ」
「あ、ありがとう。かーくんさん。わたしは平気よ。でも、さっき、コウモリ男の集団が地下へ向かったの。銀行員さんが危ない!」
「わかりました!」

 地下への階段をかけおりていく。
 そこには六体ものコウモリ男にかこまれた、インテリっぽい銀行員のおじさんがいた。今にも(やり)で突かれそうになってる。

「待て! コウモリ男! おまえたちの相手は僕らだぞ」

 どっかで聞いたようなセリフを吐きすてるのって、むしょうに心地よい。ヒーローかーくん。ウットリ……。
 現実では一生涯ないであろう、このシチュエーション。


 コウモリ男が現れた!
 コウモリ男が現れた!
 コウモリ男が現れた!
 コウモリ男が現れた!
 コウモリ男が現れた!
 コウモリ男が現れた!


 六体はさすがに、ちょっとやっかいだな。まあいい。バトルだ!

 コウモリ男って言うけど、ぱっと見、一メートル強のコウモリだ。
 ただし、二足歩行。
 最初のダンジョンにいたドラッキを百倍でっかくしたやつ。
 羽をひろげて立ってるんだけど、体が丸すぎて、どう見ても飛べそうにない。もっとダイエットしなきゃ。ドラッキはもうちょいスマートだったぞ?

 MPは節約したいんだけど、六体は多い。

「アンドーくん。みんな巻きをよろしく」
「了解」
「ぽよちゃんは通常攻撃」
「キュイ!」
「たまりんはラプソディーで」
 ゆら〜り。

 装備品のありがたさよ。
 ぽよちゃんの攻撃で、コウモリ男Aは倒れた。プスっとね。

「あっ、ぽよちゃんの聞き耳、使えばよかった」
「キュウ……」

 これまでは一ターンで戦闘終了してたんで、敵の行動パターンがわからない。あわてて、聞き耳しようとしたけど、ぽよちゃんはあせった顔で首をふった。そうか。行動前じゃないと聞き耳は使えないんだな。

「ごめん。ごめん。次のターンでいいよ」

 アンドーくんが「みんな、巻きで行こう〜」と叫ぶ。
 体が身軽になった。

 迷ったけど、僕は鋼鉄のブーメランをなげた。コウモリはまだ五体もいるんで。
 左から右へ、ブーメランはコウモリたちを順番に叩いていく。
 ゴツ、ゴッツン、ゴツ、ゴツ、ゴッツン!
 左から、通常攻撃、クリティカル、通常、通常、クリティカル!
 コウモリ男BとFは倒れた。
 よし。ブーメラン正解。
 コウモリが半分に減った。

 たまりんは海鳴りのハープをポロロン。

 さあ、コウモリたちのターンだ。
 こいつら、どんな攻撃してくるのかな?

 コウモリの攻撃は一択だった。


 コウモリ男Cの攻撃!
 コウモリ男Cは血を吸った。
 かーくんに20のダメージ。
 コウモリ男CはHPが10回復した。


 同様のことが三回くりかえされた。

 ギャーッ!
 こいつら、吸血鬼だったー!
 なんてデッカい蚊だ……。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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