第88話 手に入れた! フェニックスの羽

文字数 1,311文字



 フェニックスは強敵だった。
 僕らは全員、レベルが上がった。
 僕、蘭さん、シャケ、ぽよちゃんは一ずつ。クマりんは二。たまりんは三だ。

 フェニックスの羽を手に入れた!
 50円を手に入れた!
 フェニックスは宝箱を落とした。
 フェニックスの灰を手に入れた!

 と、テロップが告げる。
 ご、五十円って、やっす。
 たまにあるんだよな。
 強敵なのに、勝利報酬が激安な敵。

 燃えつきたフェニックスのお母さんの灰のなかに、キラリと光る五十円玉を、シャケがひろう。
 僕はそんなはした金いらないんだもんねぇ。今となっては木刀なんて何本でも買えてしまうのだ。

 それにしても、宝箱?
 フェニックスの灰?
 そんなの貰ってないぞ?

 思ってたら、僕らのガッカリ感が伝わったのか、フェニックスのお母さんが言った。

「あっ、そうそう。あなたがたには、ほんとにご迷惑をかけたので、おわびに、わたしの灰をさしあげましょう。好きなだけ持っていってください」

 灰ですか?
 まあ、くれるって言うなら貰うけどね。
 灰、灰かぁ。灰かぶり姫!
 ああ、あったかいわ。かまどのなかの灰があっかい、とか、日曜名作劇場っぽく言ってみたり。あははァ。
 というのは、もちろんジョークだ。
 この灰はただの灰じゃなかったのだ。

「わたしの羽で全身をなでると、その人はどんな病も治り、さらには寿命がのびます。灰にはそこまでの力はありません。が、戦闘で仮死状態になっている者をよみがえらせることならできます。どちらも効果は一回きりですが」

 なっ、なんですとォー?
 戦闘での仮死状態を治せる?
 それって、蘇生魔法と同じ効果を持つアイテムってことか?
 つまり、あのゲームで言えば“世界樹〇葉”。もひとつ人気のゲームで言えば、“フェニックス〇尾”。ほとんど伏せ字になってないけど、そういうアイテムだ。
 そ、それはスゴイ!

「うおー! 拾うで! 全部、拾うでェー!」
「もちろんだよー!」
「かーくん、シャケ……落ちついて」
「ビンは? ビンはないの?」
「とりあえず袋でもなんでもええやろ。あとで小分けにすれば売れるで!」
「なに言ってんだよ! 僕らがこのさきのバトルで使うんだよ!」
「おれが売ったるさかい、かーくん買うてくれや」
「はあっ? 仲間からお金とるんだ?」
「おれは商売人やー!」
「か、かーくん。シャケ……」

 僕ら(僕と三村くん)はさきを争って、フェニックスの灰をカバンにつめた。

 僕はそのとき気づいた。
 なんと、ミャーコちゃん風の猫型ポシェットが、口をパクンとあけて、どんどん灰を吸いこんでいくのを。
 ん? どうなってるんだ?
 灰を吸いこみ続けるミャーコポシェットの背中のジッパーをあけてみると、ものすごい速さで、灰が小さなビニール袋に小分けされていく。
 今は薬って錠剤が多いけど、僕が子どものころには粉薬もわりとあった。あんな感じで次々に灰が一回ずつぶんにパッキングされていく。
 便利だなぁ。いたれりつくせりだ。
 やっぱり、このポシェット、ミャーコの魂が入ってるんじゃないかなぁ?
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み