第353話 レッドドラゴン戦!4
文字数 1,711文字
おそらく、レッドドラゴンの火力はひじょうに高い。
急いで100ずつ、こっちのモンスターたちのHP増やしたけど、それでも足りない可能性がある。
できることなら、このターンで終わらせたかった。けど、前衛のみんなは行動し終わってしまった。
どうか、頼む。
この一ターンだけ、もってくれ。
ギガファイアーさえ来なければ……。
と思ってた、そのときだ。
「ハハハハハ!」
あっ、忘れてた。
伝説のおじさんがいたんだっけな。
NPCなのに、この人、自己主張が強いなぁ。
「おいおい。忘れていないかね? 若者よ。たしかに君らの攻撃はなかなかのもんだ。しかし! 水の結界には、やはり水属性魔法だろう? 行くぞ。わが奥義。冷却水ーッ!」
あっ、そうだった。
ダディロンさん、冷却水が使えるんだったなぁ。
大量の水が噴水のように湧きだし、レッドドラゴンを包みこむように渦巻く。ケロちゃんの呼んだミストを吸いこんで、渦巻きはいっそう激しくなった。
さすがは弱点属性だ。
レッドドラゴンは身をよじって悶え苦しんでる。
ザーッとレッドドラゴンのHPが、みるみる下がる。
一発で1800ダメージだ!
魔法攻撃にしては、最大級クラスの効きだ。
が、それでも、レッドドラゴンのHPは17000以上、残ってる。
来るッ!
いよいよ来るぞ。
レッドドラゴンの攻撃だ。
どうか、どうか、雄叫びだけですましてくれますように!
僕の願いは聞きとどけ……られなかったー!
レッドドラゴンは大きく息を吸いこみ、カッと口が裂けそうなくらいひらく。
これまで見たこともないほど巨大な火柱が吐きだされてきたーッ!
「わあーッ!」
僕は両手を前につきだして、炎の手袋で、ごうごうと轟音をあげて迫りくる炎をなんとかさけようとした。
もうね。火の粉とか火の玉とかじゃない。数分間続く、炎の壁!
熱風だけで髪の毛がチリチリ焼けていく。
ギガファイアーだ。
僕のHPは400も減った。
僕はかぶとも旅人の帽子のままだし、火属性の防御がほとんどないからね。これで炎の手袋じゃなかったら、まともにくらってたとこだ。
ようやく、火炎放射器の一斉掃射みたいな、ぶ厚い火の壁がやんだ。
ああ……僕のHPが400減るんだもんな。
僕のまわりは死体(戦闘不能)がるいるいだ。
HPの低いケロちゃん、知力が低く魔法攻撃に弱いシルバンは、もちろんアウト。
アンドーくんは人間だから、三村くん開発のよろい下の装備などのおかげで、なんとか生き残ってる。でも、フラフラだ。平手打ちされただけで、かんたんに倒れてしまう。
ダディロンさんは——かなりキツそうだけど、アンドーくんよりはマシな感じ。たぶん、最大HPがそうとう高い。500くらいはあるんだろう。
そうか。僕らって、まだブレス攻撃を軽減する魔法、誰も覚えてないもんな。今の僕らの弱点はブレスだ。
「アンドーくん、猫車に入って」
「……うん」
「たまりん、全体回復魔法お願い。アンドーくんは、『みんな、元気になれ〜』で。たまりんの回復だけじゃ半分くらいしか治らないと思う」
たまりんは詩聖の職業スキルで、『みんな、もっと元気になれ〜』に相当する全体回復技を使える。
これで生き残ったメンバーのHPはほぼ全回復できるだろう。
だけど、ケロちゃんが倒れてしまったせいで、水の結界が消えた。
水の結界は補助魔法だから、後衛でも使えた。最初からケロちゃんを後衛にして、うしろから水の結界をかけてもらうべきだったんだ。
これで計算が変わってしまったぞ。
僕がこのターンでレッドドラゴンに与えることができるダメージは約18000だ。通常攻撃やクリティカルダメージには幅がある。ことによると、それより少ないかも。
ダディロンさんは生き残ってるけど、水の結界が消えたから、冷却水のダメージは、さっきの半分の900ていどだ。
ダメだ。足りてない。
このターン、どうやってもレッドドラゴンを倒せない。
あと千か二千、ことによると、ほんの数百だけ、レッドドラゴンのHPが残ってしまう。
どうしたらいいんだ!
次のターンでのギガファイアーに僕らが耐えれるかどうか、勝負はそこにかかってる。