第308話 潜入作戦開始!

文字数 1,153文字


 翌朝は快晴。
 これから決戦に向かうとは思えないほど、のどかだ。

「では、出発だ!」

 ワレスさんの号令で、僕らは四台の馬車をつらねて街道を南へ進む。

 先頭はワレスさんの馬車。
 その次が蘭さんや三村くんたち第一パーティーの乗った馬車。
 そのあと僕やアンドーくんの第二パーティーの猫車。
 猫車、乗り降りはちょっとだけ窮屈だけど、乗り心地はけっこう快適だ。
 最後尾はクルウたちのパーティーだ。
 前後を強い戦士たちに守られている。

「ミルキーまで街道が続いてるんだね」
「先代王の時代までは国交があったけんね」
「あっ、そうだったね」

 そうだ。特訓に夢中でウッカリまだ聞いてなかったけど、蘭さんの両親はどうなったんだろうか? 無事にシルキー城からつれだせたのかな?
 いや、無事だったんなら、蘭さんが喜んで僕らに報告してるはずだ。
 てことは、つれだせなかったか。またはワレスさんがたどりついたときには、すでに……?

 あっ、ダメだ。ダメだ。
 これから決戦ってときに、そんな暗いこと考えてちゃ。
 とりあえず、いっしょうけんめい、がんばる。それしかない!

 街から街へは、ワレスさんかクルウの転移魔法で馬車ごと飛び、街のなかは馬車で移動するという方法で南下していく。ワレスさんたちの馬車が軍隊用の大きなやつなので、転移魔法でも遠距離は飛びにくいらしい。

 馬車のなかでは退屈なので、僕はこの世界のスゴロクみたいなものやカードで遊んでいた。
 けど、そろそろミルキー国に入るので、何が起こっても大事ないように武器の整備をしておいてくれと、ワレスさんから伝達が入ってきた。
 なので、それぞれの武器を磨いたり、不備がないかチェックする。

 僕はこれまで精霊王のレプリカ剣を、ずっと『燃えつきろ〜』効果の精霊石のままにしてたけど、もっと戦いを有利に運べる効果がないのかな?

 あらためて精霊石をながめる。
 すぐにセットできるよう加工済みのやつは、最初に廃墟の幽霊店主から買ったときのセット、七つだけだ。
 赤、青、黄色、緑、透明、オレンジ、紫のレインボー色。
 ずっと赤をつけてたから、ほかの効果がわからない。ちゃんと特訓のときにでも試しとくんだった。属性最上級魔法の『燃えつきろ〜』がふつうに戦闘に便利だったもんだからさ。

「次は……そうだな。オレンジにしてみようかな。元気の出る色だから」

 勇気の色って感じ。
 内側から力が湧いてくるような。
 ん? 剣の攻撃力が20上がった?
 なんだ。攻撃力プラス20効果なのか。
 魔法がよかった気もするけど、まあいいや。ちょっとこれで試してみよう。

 僕は燃える太陽のようなあったかいオレンジ色を、しばらく見つめていた。
 この精霊石がこれからの戦いに、すごい力を与えてくれるとは、このときは思いもしなかったんだよねぇ。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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