第58話 子グマちゃん

文字数 1,026文字



 スライムの見ためは、以前のぬけ道で見たときと変わらない。
 あいかわらず、プルプルして可愛い。

 子グマちゃんは初めて見た。
 野生のって言うけど、見ため、ぬいぐるみなんだけど?
 めっちゃモコモコしたピンクのクマだ。つぶらな目が僕好み。

 そう言えば、ここに来る前、山岳地帯でグリズリーって熊のモンスターがいた。なのに、なんで今さら、子グマちゃん? それも、ぬいぐるみ。
 赤いリボンつけて一体五十円で売れば、女の子にバカ売れするだろう。

「ぬいぐるみが動いてる……」
「ぬいぐるみですね」
「ま、モンスターやし、いろいろおるんやろ」

 二体しかいない。
 しかも弱そうな子たちだ。
 ひさびさに、やっつけるのが可哀想になってくる。やっぱり害虫とは、こっちの受ける印象が違う。

「ちゃちゃっと終わらせよっか」

 僕は完全に甘く見ていた。
 なんか猛が苦笑いしてるなぁとは思ってたんだけど。

 僕はそれで思いだした。
 ん? 待てよ。
 スライムレベル10?
 それって、もしや……。
 めったやたらに仲間を呼んで、最後には一匹にくっついてスライムの王様になるやつか?

 そうか。
 あの手強いスライムたちか。
 レベルが高いぶん、一体ずつがしぶとい上、倒しても倒しても仲間が増えるから、長期戦になるんだよね。しかもキングになっちゃうと、さらに強敵になるし。

「ロラン。シャケ。ここはスライムから倒そう。やつが仲間を呼ぶ前に」
「うん。わかりました」
「了解やぁ」
「キュイ!」

 僕らは勇んで銭湯へGO!
 あっ、ミスった。
 戦闘へGO!
 変換ミスって怖い。意味がぜんぜん違う。

 一ターンめ。
 まずは蘭さん。
 ピシ、ピシ、ピシ、ピシリと鞭連打〜
 思ったとおりだ。強い。
 スライムは二打で撃沈。
 残り二打で子グマちゃんも……って、あれ?
 子グマちゃんの挙動がおかしいぞ?


 子グマちゃんが仲間を呼んだ。
 子グマちゃんが仲間を呼んだ。
 子グマちゃんが仲間を呼んだ。
 子グマちゃんが仲間を呼んだ。
 子グマちゃんが仲間を呼んだ。
 子グマちゃんが仲間を呼んだ。
 子グマちゃんが仲間を呼んだ。


 このテロップ、どっかで見たぞ。
 な、なんかイヤな予感が……。


 なんと!
 子グマちゃんたちが、みるみるくっつき……きょ、巨大化していく。
 テディーキングになったぁー!


 や……やっぱり!
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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