第374話 イケノくん戦!1
文字数 1,213文字
なんで、こんな悲しい戦いを何度もくりかえさなければならないんだ。
ナッツのお母さん。
ポルッカさん。
アンドーくんのお母さん。
蘭さんのお兄さん。
今度はイケノくん。
こいつらに、何度、大切な人を思う優しい気持ちをふみにじられなければならないんだ?
「はーはっはっ! おまえらにやれるか? ほら、かかってこい!」
ゲラゲラ笑うその姿は、もはや人のものではない。魔物だ。
イケノくんは、グレート所長の研究所で実験台にされてしまったのだ。
巨人……だろうか?
筋肉が盛りあがり、上半身が異様に大きな逆三角形の体格。
肌色が悪のヤドリギのように青く変じている。
背の高さは少なくとも八メートルはある。
これまで一度も聞いたことのない音楽がかかった。どうやら、今回だけの特別な戦闘音楽のようだ。
悪のヤドリギが現れた!
野生のロレーヌ妃が現れた!
テロップが戦えと言う。
やるしかないのか。
しかも、お妃様までお供でついてる。
言われてみれば、ゆらゆらと立つあの感じは、クラウディ村で見た夢遊病中の村人みたいだ。鼻ちょうちんこそ出してないけどさ。
「母上……」
「セイヤ……」
蘭さんとアンドーくんが沈んでる。
「ロラン。アンドーくん。行くよ?」
二人はうなずいた。
瞳はうるんでいるような気がしたが。
「パーティーを二つにわけよう」と、ワレスさんが言った。
「そんなことできるんですか?」
「一つのパーティーで戦える人数は前衛後衛をあわせても八人までだ。だが別々に敵と遭遇してしまったことにすれば、その数は倍、三倍と増やせる。軍隊の戦いかただな」
「そうなんですか」
「それには場所をあるていど離さなければならない。同一のパーティーだと認識されると前衛後衛、さらにその補欠としてしかあつかわれなくなる。おれたちのパーティー、おまえたちのパーティーで前後に挟み討ちしよう」
「わかりました。でも、そこまでやる必要がありますか?」
「ヤドリギは卑怯な手段を平気で使ってくる相手だ。そういう意味で油断がならない。まあ、念のためだな」
さすが! どんな敵にも手をぬかない。
バックにワレスさんたちのパーティーがついてると思うと、万一のときにも安心していられる。
それにパーティーが二つあれば、どちらかが全滅したときにも、もう一方が戦ってるすきに復活できるかもしれない。
その場合、教会まで帰されるのかな? もしそうなら、僕はとなりの村まで帰ることに……あっ、リーダーが蘭さんなら、蘭さんがお祈りした場所で復活できるな。
「ロラン。最後にどこでお祈りした?」
「お城のなかにある教会ですけど」
「よし。じゃあ、リーダーはロランで。前衛はロラン、僕、バラン、クマりん。あれ? シャケがいない。どこ行ったの?」
「わかりません」
「あっ、そうか。ロランとは別室に離されたんだもんね」
この大事な場面で、どこに行ってしまったんだろう?
ワレスさんたちともいっしょに来なかったし。