第169話 つけてくる者の正体
文字数 2,071文字
MPを使いすぎても戦闘にさしさわるので、防具などの呪い解きはあとまわしにして再出発だ。
でも、これでパーティーのうち三人が回復魔法を使えるようになったし、攻撃力が底上げされて、バトルは比較にならないほど楽になった。
とくにアンドーくんの世界樹の枝先はいいよね。MPを使わずして、戦闘のたびにHP回復できる。
これに似た武器、あのゲームにもあったよなぁ。シリーズの7だったかな? 僕は毎回、戦闘のたびに必ずソレを使って、メンバーをつねに無傷で保ち、MPを節約したもんだ。ケチくさい戦いをする男、かーくん。
おっと回想にふけってる場合じゃない。
またまたブッキーが出てきた。
「僕、つまみ食いするから、みんなで倒して」
「わかった」
ふふふ。この調子でさっきから、せっせとつまみ食いにいそしむ僕だった。もう十回はチューチューしたよ。
今の僕らならブッキーは一撃で倒せるし、三体ずつで出てくるからお供がいなければ、確実に一ターンでしとめられるのも利点だ。
チューチューした僕の数値は、これだ。
HP220『12』、MP170『8』、力60(66)『1』、体力58(63)『2』、知力110、素早さ65『2』、器用さ92、幸運99998。
レベルは22のまま。なのに、数値は合計20も水増しされてる。
こうして見ると、ステータスの増加にはちょっとした癖があるね。
ゼロのつくキリのいい数字や、ゾロ目、または下ひとけたが5のつく数字におさまることが多い。そして、つまみ食いはHP、MP、数値の低いステータスで発動しやすい。いっそのこと幸運が上がって、マックスまで振りきってほしいんだけど、そうは行かないか。
それにしても、おいしすぎるこの技。
僕は有頂天なんだけど、ナッツのようすがおかしい。うしろをしきりに気にしてる。
「どうしたの? ナッツ」
「なんか、ついてくる気がするんだよ。兄ちゃんたち、気づかない?」
「這いよるヘドロじゃない? あいつ、背後から急に近よってきて、先制攻撃しかけてくるヤツだから」
「うーん。そんなんじゃない……気がするんだけどな」
蘭さんの危険察知があったらわかったんだろうけど、残念ながら、今の僕らにはそれはできない。
闇をふりかえっても何も見えない。
ところがだ。
とつぜん、僕らの目の前を光がよぎった。
小さな光の玉が暗闇に尾をひいて消えていった。
*
「わあッ! 今の何? 人魂? あっ、ごめん。たまりんのことじゃないよ?」
ドロドロっ!
あっ、たまりんが怒った。
僕の顔面めがけて体あたりしてくる。
そこそこ痛い。
「ごめん。ごめん。わざとじゃないんだよ。ちょっと口が正直だっただけ」
ヒュードロっ!
ハハハとアンドーくんが笑う。
「かーくんやつ、仲がいいね。けっこうお似合いだが」
お似合い? 人魂と?
わかんないなぁ……。
それにしても、さっきの光はなんだったんだろう?
このへんには火の玉は出てこないし、モンスターじゃなかったとしたら、なんだと言うんだ?
怖いんだけど。
なんだか、あたりのようすが変わってきた。さっきまで人工的な石壁だったのに、岩壁が目立ってくる。岩肌をけずった洞くつのようだ。敷石もとぎれがちになり、水路が太くなっていく。自然の地下水脈に合流したんだろう。
「出口が近そうな気がするよね」
「すうね。どっかに外に通じる天然の洞くつがああかもしれん」
風の流れも感じる。
この水脈をたどっていけば、もしかして外に出られるのでは?
「あっ、あっちのほうが明るいよ? 行ってみよう!」
最後の人工物のスペース。
さっき休憩した場所のような二メートル四方の空間だ。
そこから続いていく敷石されていない岩の小道にふみだそうとしたときだ。
何やらうしろのほうで、ゴトンッと大きな音がした。そののち、「うおーッ!」という叫び声が……。
な、なんですか? 今の?
今回は癒しの泉がないから、ボス戦はないのかなぁ、なんて思ってたんだけど?
僕の考えは甘かったようだ。
かえりみると、暗闇のなかに、そいつがいた。
いったい、いつからついてきてたんだろう?
ナッツが言ってた気配って、こいつだったんだ。
僕らのあとを追って、そいつが敷石の四角い空間にやってくる。
赤レンガのような色のボディーは、前回の僕らとの戦いのせいで、ボロボロにヒビ割れ、がっぽりと穴があいていた。
ゴーレムだ。
廃墟の研究室のなかで戦ったアイツが、そこに立っていた。
「……そうか。僕らがこの地下水道に入ってすぐあとに、竜兵士がやってきて、
なんてヒドイ話だ。
もともとは、みんな幸せに暮らしてた人間だったんだぞ?
それを勝手な理由でさらってきて、モンスターなんかに作りかえて、戦えなくなったら簡単にポイ。
そんなの許せない。
グレート研究所長。いつか絶対におまえのことは倒してやるからな。
ゴーレムが両手をふりあげた。
戦わないといけないのかッ?
でも、これでパーティーのうち三人が回復魔法を使えるようになったし、攻撃力が底上げされて、バトルは比較にならないほど楽になった。
とくにアンドーくんの世界樹の枝先はいいよね。MPを使わずして、戦闘のたびにHP回復できる。
これに似た武器、あのゲームにもあったよなぁ。シリーズの7だったかな? 僕は毎回、戦闘のたびに必ずソレを使って、メンバーをつねに無傷で保ち、MPを節約したもんだ。ケチくさい戦いをする男、かーくん。
おっと回想にふけってる場合じゃない。
またまたブッキーが出てきた。
「僕、つまみ食いするから、みんなで倒して」
「わかった」
ふふふ。この調子でさっきから、せっせとつまみ食いにいそしむ僕だった。もう十回はチューチューしたよ。
今の僕らならブッキーは一撃で倒せるし、三体ずつで出てくるからお供がいなければ、確実に一ターンでしとめられるのも利点だ。
チューチューした僕の数値は、これだ。
HP220『12』、MP170『8』、力60(66)『1』、体力58(63)『2』、知力110、素早さ65『2』、器用さ92、幸運99998。
レベルは22のまま。なのに、数値は合計20も水増しされてる。
こうして見ると、ステータスの増加にはちょっとした癖があるね。
ゼロのつくキリのいい数字や、ゾロ目、または下ひとけたが5のつく数字におさまることが多い。そして、つまみ食いはHP、MP、数値の低いステータスで発動しやすい。いっそのこと幸運が上がって、マックスまで振りきってほしいんだけど、そうは行かないか。
それにしても、おいしすぎるこの技。
僕は有頂天なんだけど、ナッツのようすがおかしい。うしろをしきりに気にしてる。
「どうしたの? ナッツ」
「なんか、ついてくる気がするんだよ。兄ちゃんたち、気づかない?」
「這いよるヘドロじゃない? あいつ、背後から急に近よってきて、先制攻撃しかけてくるヤツだから」
「うーん。そんなんじゃない……気がするんだけどな」
蘭さんの危険察知があったらわかったんだろうけど、残念ながら、今の僕らにはそれはできない。
闇をふりかえっても何も見えない。
ところがだ。
とつぜん、僕らの目の前を光がよぎった。
小さな光の玉が暗闇に尾をひいて消えていった。
*
「わあッ! 今の何? 人魂? あっ、ごめん。たまりんのことじゃないよ?」
ドロドロっ!
あっ、たまりんが怒った。
僕の顔面めがけて体あたりしてくる。
そこそこ痛い。
「ごめん。ごめん。わざとじゃないんだよ。ちょっと口が正直だっただけ」
ヒュードロっ!
ハハハとアンドーくんが笑う。
「かーくんやつ、仲がいいね。けっこうお似合いだが」
お似合い? 人魂と?
わかんないなぁ……。
それにしても、さっきの光はなんだったんだろう?
このへんには火の玉は出てこないし、モンスターじゃなかったとしたら、なんだと言うんだ?
怖いんだけど。
なんだか、あたりのようすが変わってきた。さっきまで人工的な石壁だったのに、岩壁が目立ってくる。岩肌をけずった洞くつのようだ。敷石もとぎれがちになり、水路が太くなっていく。自然の地下水脈に合流したんだろう。
「出口が近そうな気がするよね」
「すうね。どっかに外に通じる天然の洞くつがああかもしれん」
風の流れも感じる。
この水脈をたどっていけば、もしかして外に出られるのでは?
「あっ、あっちのほうが明るいよ? 行ってみよう!」
最後の人工物のスペース。
さっき休憩した場所のような二メートル四方の空間だ。
そこから続いていく敷石されていない岩の小道にふみだそうとしたときだ。
何やらうしろのほうで、ゴトンッと大きな音がした。そののち、「うおーッ!」という叫び声が……。
な、なんですか? 今の?
今回は癒しの泉がないから、ボス戦はないのかなぁ、なんて思ってたんだけど?
僕の考えは甘かったようだ。
かえりみると、暗闇のなかに、そいつがいた。
いったい、いつからついてきてたんだろう?
ナッツが言ってた気配って、こいつだったんだ。
僕らのあとを追って、そいつが敷石の四角い空間にやってくる。
赤レンガのような色のボディーは、前回の僕らとの戦いのせいで、ボロボロにヒビ割れ、がっぽりと穴があいていた。
ゴーレムだ。
廃墟の研究室のなかで戦ったアイツが、そこに立っていた。
「……そうか。僕らがこの地下水道に入ってすぐあとに、竜兵士がやってきて、
何か
をすてていったみたいだった。あれって、このゴーレムだったんだ。僕らとの戦いで修復が難しくなったから……」なんてヒドイ話だ。
もともとは、みんな幸せに暮らしてた人間だったんだぞ?
それを勝手な理由でさらってきて、モンスターなんかに作りかえて、戦えなくなったら簡単にポイ。
そんなの許せない。
グレート研究所長。いつか絶対におまえのことは倒してやるからな。
ゴーレムが両手をふりあげた。
戦わないといけないのかッ?