第89話 さらば、フェニックス

文字数 829文字


「はい。ロラン。ロランにもフェニックスの灰、わけてあげるよ。いっぱいとれたから」
「あ、ありがとう……」
「もしものときに、みんなが均等に持ってるほうがパーティーのためだと思うんだよね。僕は回復役だから、ちょっと多めに持っとくけど」
「そ、そうですね……」

 王子様の蘭さんは少しあきれてるみたいだ。庶民の知恵は大事なんだよ?

 これも僕の幸運度のおかげなんだろうか。宝箱は出ないけど、灰は手に入れた。それも百回ぶん以上は集まった。
 三村くんも同じくらい集めたはずだから、たしかに多少は売り物にしても問題なさそうだ。そのうち蘇生魔法をおぼえたら、使用頻度も減るだろうし。

 これだけでも充分なお礼だったのに、フェニックスのお母さんはさらに、こんなことまで言いだした。

「わたしたちは巣の場所をどこか遠いところに移すことにします。あなたがたに、もしも困ったことがあれば、これで呼びだしてください。きっとご恩返しをしますから」

 そう言って、お母さんは僕らの前に何かをさしだした。そのクチバシにくわえられていたのは、小さな金色の羽の形をしたトップのついたペンダントだ。

「これをどうしたらいいの?」
「わたしの力が必要なときに、その羽を朝日にかざしてください」

 うーむ。
 これってイベントアイテムなんじゃないかな?
 いずれ必須になりそうだ。

「ありがとうございます」と言って、蘭さんが受けとる。
 まあ、勇者は蘭さんだからね。当然だ。僕は主役だけど、従者。

 フェニックスの親子が朝焼けの空に飛んでいく。

「さよなら。神の鳥よ」
「さいなら。またなぁ」
「バイバイ。ふえ子〜」
「かーくん。ふえ子って、なんですか?」
「えっ? フェニックスの子どもだから、ふえ子」
「いいんですか? そんな名前、勝手につけて」
「変な名前やなぁ」

 いや、三村くんほどじゃないよ……。

 遠くなるフェニックスの親子に手をふって、僕らは下山するのだった。
 スズランさん、待っててください。
 僕はやりましたよ〜。



 第二部 完
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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