第109話 銀行からのプレゼント
文字数 1,914文字
銀行から貰った二つの粗品。
前回もそうとうにいいものだったから、今回も期待してしまう。
妖精の羽衣は、背中に透明な蝶の羽のような飾りのついた、キラキラしたキレイな布地でできたワンピースだ。ワンピースというか、ローブの一種なんだろうけど、見ためからしてそうかなと思ったら、やっぱり女の子専用装備だった。なんで僕に装備できないものをくれるかなぁ。
守備力65。炎属性、氷属性のダメージを25%軽減。魔法ダメージ30軽減。
うーん。今、着れるとそうとうに頼もしい防具なんだけど。魔法ダメージ30軽減ってことは、30以下のダメージなら実質ノーダメージってことだ。
ま、いいや。これはアレだ。
スズランちゃんにプレゼントしよう。
「あら、ありがとう。かーくんさん。かーくんさんって優しい上に気前もいいのね」なんて言ってくれるかもしれない。もしかしたら、ほっぺチューくらいは……あっ、ダメダメ。期待しない。
ちなみにモンスターには着れないんだろうか?
ぽよちゃんは……着れないみたいだ。
そうか。ぽよちゃんは男の子なのか。知らなかった。
あ、あれ?
たまりんが……着れる。
たまりん、女の子だったのか……し、知らなかった。
たまりんの魔法ダメージが30減るって、それはもうクリティカル攻撃以外で、たまりんが倒されることはなくなるってことじゃないか?
ど、どうしよう。
これはスズランさんに……でも、でも、たまりんが物欲しそうに、じっとこっちを見てる。たまりんも女の子だから、きっと可愛い服が着たいんだ。今、ヨダレかけだもんな。
うっ、うう……。
「た、たまりん」
ゆらり。
「この羽衣、着たい?」
ゆらゆら、ゆら〜り。
「うん……そうだよね。着たいよね。じゃあ、これは、たまりんが着ていいよ」
ゆらゆら〜
ヒュードロ!
ああ……さよなら。スズランさんのほっぺチュー……。
ま、まあいいや。
プレゼントはもう一個あるしな。
えーと、妖精のネイル……ネイルか。
つけ爪ってこと?
どう考えても僕には装備できない。
見ためは青いガラスキャップみたいな形のつけ爪で、振ると虹色に光る粉が舞う。妖精の
数値は攻撃力135……ん?
ひゃ、135?
ひゃくさんじゅうごですか?
たしか、あのゲームのⅤでは、モンスター系の装備できる爪、牙の最高数値は120くらいだったような?
まだ中盤の拠点であるボイクド国の王都シルバースターについてもいないのに、終盤最強装備か、それに近い攻撃力!
しかもこれ、付与効果がある。人型・ドラゴン系モンスターのダメージ10%増。魅了効果20%。
あっ、いや、冷静に考えれば、それもそうか。だって貯金が百五十万って、中盤前にたまるはずない金額だもんな。終盤でも、かなりあとにならないと……。
ん? モンスター系?
てことは、もしかして?
僕はすっかり熟睡中のぽよちゃんの手(前足)に妖精のネイルをあててみる。できる。装備できるぞ。
僕は、ぐうすか寝てるぽよちゃんの口から黒金の牙を外すと、丸まっちい可愛い手に妖精のネイルをつけた。カプ、カプ、カプとキレイにハマって、ぽよちゃんの攻撃力は段ちで急上昇。しかも笑ったとき、黒い牙のぞくのイマイチ可愛くなかったんで。いいねぇ。妖精のネイルは見ため目立たないし。猫用爪キャップみたいなもんだ。
さてと、じゃあこれで買い物終わりかな?
所持金も預けて安心したし、残りは寄付だ。冒険者ランクを上げてこよう。
残額は二十二万か。二十万寄付してもいいな。
僕はギルドの受付に戻った。
またまたアクビしてるお姉さんにとびついていく。
「すいません! ギルドに寄付するには、どうしたらいいんですか?」
「えっ? はっ? あ、どうも。見てませんよね?」
「お姉さんがアクビしたとこは見てません! 寄付したいんですけど」
「そ、そう? 見てないんならいいんですよ」
いや、わざわざアクビに限定して見てないって言ってるってことは見てるんだけど、お姉さん的にはそれでいいんだ。
「ギルドに寄付ですね。わたしが受付ます。おいくらですか?」
「その前にちょっと教えてください。冒険者ランクについてなんですけど。ランクはいくつあって、いくら寄付したら、どこまで上がるんですか?」
お姉さんは親切に教えてくれた。
このお姉さん、口元につやぼくろがある。色っぽいなぁ。
「では、説明いたしましょう」
文字数がかさんできたので、次回に続く!