第136話 いよいよ、トーマスの家へ

文字数 1,375文字



 これで二階からモンスターはいなくなった。あとは一階だ。

「ありがとう。少年。君の活躍はギルド貢献度2000ポイントだ。それに、ろうかで失神してる人たちを見つけて救助したことになる。おそらく、プラス3000ポイントは加算されるだろう。飛び級でランクA昇格だな」
「ほんとですか? ヤッター!」

 少年じゃないけど、このさい、そこは無視でいい。

「じゃあ、僕らは知りあいを助けに行きます」
「うん。気をつけてな」
「ありがとうございました。かーくんさん」
「二階はシャッターおろすからさ。あたしたちは一階にいるソウレたちと合流するよ。そしたら、ギルドはあたしたちで守れる。ほかにも来てくれた冒険者がいるみたいだしね」

 仕事斡旋所のおじさん、フラウさん、ルベッカさんとそれぞれと握手して、僕らはギルドをあとにした。

「やっぱり、ギルドはいざってときのために戦える人を雇ってるんだね」
「用心棒をかねとうだね」

 ギルドには近所の人たちも逃げこんでいく。なかには戦えそうな人もいるから、よっぽど強いモンスターでも現れないかぎりはもう心配ない。

 広場にもたくさんモンスターが闊歩(かっぽ)している。全部倒したいけど、ただウロついてるだけのヤツらを相手してたらキリがない。
 僕らは先を急いだ。

 ギルドの裏通りに入り、まじわる三本めの小路。その角っこにあるトーマスの家。

 そこまで来て、僕は凍りついた。
 家のなかに、ゴードンがいる!
 居間のソファーに座って、ふんぞりかえっている。ほかにも手下のモンスターがウロウロしていた。

「な、なんで?」
「……かーくん。ロランは勇者だが?」
「うん」
「トーマスはロランの両親のお城の兵士だけん。ロランが助けに来うと思っちょうだない?」

 な、なるほど。そういうことか。
 つまり、トーマスを盾にとって、ロランを捕まえる作戦なんだ。
 窓の外から見たかぎりでは、家のなかに人の姿はない。モンスターだけだ。でも、ここからはトーマスの寝室は見えないしな。

 そう思って、かどをまがった。
 トーマスの寝室が見える場所まで移動した。
 すると、そこにトーマスのお母さんがいた。裏口の近くの防火水槽のかげに隠れている。

「あっ、あなたたちは……」
「はい。ホワイトドラゴンのウロコを持ってきました。トーマスさんは?」
「まだ家のなかに……」
「わかりました。お母さんはここにいたら危ないです。ギルドで待っていてください」
「でも……」
「約束します。トーマスは必ず助けますから。アンドーくん。お母さんをギルドまで送ってあげて」

 アンドーくんなら忍び足を使って、敵に見つからずに行き来できる。

「わかった。待っとってよ。かーくん」
「うん」

 アンドーくんがパーティーから一時離脱する。仲間はぽよちゃんと、たまりんと、クピピコだけだ。

 トーマスの寝室の窓からなかをうかがってみた。トーマスが一人でベッドによこたわっている。モンスターの姿はない。でも、そうとう危機的状況だ。朝に見たときより、さらに顔色が悪い。一刻を争う容体だとわかった。

 今なら敵に見つからずにトーマスの寝室に忍びこむことはできる。でも、窓には内からカギがかかっていた。

 むーん。どうする? かーくん。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み