第220話 泣き声のぬしは?
文字数 956文字
シクシク。シクシクと響く悲しげな泣き声。
いったい誰が泣いてるんだろう?
魔王軍の罠じゃないよね?
行ったら、めちゃくちゃ強いヤツが待ちかまえてたりして……。
いちまつの不安をいだきながら、ろうかを歩いていく。
泣き声はろうかをまがった角の部屋のなかから聞こえてくるようだ。
「ぽよちゃん。ずっとそばにいてね。一人にしちゃヤダよ?」
「キュウぅ……」
心臓バクバクしながら、そうっと扉の前に立つ。
シクシクシク……シククシク……。
なかから声が聞こえるなぁ。
ドア、あけないとダメかな?
ダメだよね。
じゃ、あけよう。
カチャ。キィィィ……。
のぞくと、子ども部屋のようだ。
花やてんとう虫や虹の描かれた壁。
お姫様の調度品のような家具。
カーテンは淡いピンク色。
窓ぎわに女の子がすわってる。
こっちに背をむけてるけど、モンスターじゃない。人間の女の子だ。五、六さいくらいかな。水色のエプロンドレスにボンネット。金髪をおさげにしている。
僕は部屋のなかへ入っていった。
「君、どうしたの? なんで泣いてるの?」
くるりと女の子がふりかえった。
大きな目の可愛い女の子だ。
「誰?」
「えーと。僕は、かーくん。君、このお屋敷の子?」
女の子はうなずく。
「あたし、マルッカ。ママが変になってしまったの」
「ママって?」
「ママはママよ。あたしとムルッカのママ」
「ムルッカは?」
「お兄ちゃん」
もしかして、ポルッカさんの子どもか?
とにかく、子どもをこんなところでほっとくわけにはいかない。
「一人でいたら危ないよ。いっしょに行こう。お兄ちゃんはどこにいるの?」
「わかんない」
「そうか。はぐれちゃったんだね。いっしょに探そう」
ま、どうせ。屋敷のなかは、くまなく歩くんで。
僕はマルッカの手をひいて部屋を出た。
もとの場所まで戻っていくと、ようやく決着がついていた。
クマりんが勝ったらしい。
ピンクのキングが水色のキングをふみつけて、口から火を吹いて——ええーッ! クマりんが火ィ吹いてるんだけど?
どう見ても怪獣だ。
「クマりん、火、吹けたんだ?」
「がおーって魔法みたいだが」
「ああ、あったね。がおーって」
やっぱり、ちゃんと仲間の技を確認しとかないとダメだねぇ。
戦闘終了の音楽が鳴った。
野生の女の子はどこに行ったのかなぁ?