第123話 竜の岬到着〜

文字数 1,438文字


 竜の岬についた。
 つまみ食いってどうやってやるのか、ほんとに書いてあるとおりの効果なのか試してみたいんだけど、モンスターに遭遇しなかった。戦いたいときにかぎって出会えない。

 でも、ここからはダンジョンだ。
 ワールドマップよりエンカウント率が高まる。

 僕らは薄暗いほら穴のなかへと入っていった。
 マーダー神殿に向かう途中や、フェニックスのいる朝焼けの断崖に行くときに、洞くつは経験済みだけど、ここのはなんか湿っぽい。海が近いからかな? 洞くつの岩壁にフジツボがひっついて、水たまりのなかにはカニやヒトデが歩いてる。

 蘭さんの足がふるえていた。

「ロラン? どうしたの?」
「僕、こういう不潔っぽいところは、ちょっと……」

 そうだったね。現実でも虫とか大嫌いだもんね。ちょい潔癖症な蘭さん。

「じゃあ、選手交代しようか。クマりんも、なかの綿が水吸いそうでイヤじゃない?」
「ぬいぐるみに見えてもモンスターやで? それはないやろ」
「でも、ほら、なんかイヤそうな顔してるよ?」
「しゃあないな」
「わが出ぇよ? ザコ戦は短剣で通常攻撃すれば、MP使わんし」

 というわけで、アンドーくんが出てきて、蘭さんと入れかわった。クマりんのかわりは、ぽよちゃん。
 バランはまだ馬車で育てないと。バランが育てばザコ戦でもボス戦でも戦力になる、バランスのいい戦士になるだろうな。バランなだけに。バランな……いいよぉ。おやじギャグだよぉ。

 ピトン、ピトンと水音がどこからか聞こえる。かすかに潮騒も届く。赤や青やいろんな色のヒトデがけっこうキレイだ。僕は潮の匂いのする、こういう洞くつも嫌いじゃない。馬車が通るだけの充分な広さもある。

 小銭はあいかわらず拾うよね。もう一回で三万とか拾っても、なんとも思わなくなってきた自分が怖い。三万拾うってことは貯金と所持金の総額が三百万になったってことだ。ここに来るまでに百万円ひろったんだな、僕。

 宝箱の中身の鋼鉄のかぶとが、もうぜんぜん、ありがたく見えない。なんかこう、たまには販売されてない珍しい武器とか欲しいなぁ。

 そんなことを思いながら歩いていると、いつもと色の違う宝箱が置いてあった。ふつうの宝箱は赤いんだけど、それは銀色だ。もしかして、ミミックかな?

「お金だったら僕いらないから、みんなでわけてよ。珍しい武器だったらちょうだい」
「いいですよ。僕は鞭以外には興味ないし」と、蘭さん。

 いや、その勇者、どうよ?
 女王様って呼んじゃうよ?

「ミミックかもしれないから、みんな、かまえといてね」

 僕は用心深く銀色の宝箱をあけた。
 ミミックではなかった。
 なかに、すごく小さな竪琴(ハープ)が入っていた。未鑑定の道具としか表示されないが、僕はせっかく商人になったので鑑定してみた。

「海鳴りのハープだって。攻撃力は低いけど、変な付与効果があるね。3ターン奏でるごとに“潮騒のラプソディー”発動だって。潮騒のラプソディーってなんだろ?」
「たぶん、詩人の職業魔法みたいなものじゃないですか?」
「おれら、詩人おれへんやん。誰も装備できへんやろ?」
「うん——っと、ん? あれ? たまりんが装備できる」

 たまりんは馬車からおりてきて、嬉しそうに、ゆら〜りと踊った。

 変だな。
 装備可能者の説明には、詩人、精霊族って書いてあるんだけど。
 まあ、火の玉だし、精霊みたいなもんかな?
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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