第75話 火の玉、怖い……

文字数 816文字



 えてして勝利を確信して慢心したとき、それは起こる。
 とつぜんの予想外なモンスターの反撃によって、いっきにピンチにおちいる。そんなことが、ままある。

 三村くんの鉄のブーメランは思ったとおり外れた。
 やっぱり僕らには魔法攻撃要員が不足してるなぁ。早く魔法使いが仲間になってくれないと。

 次の順番は、ぽよちゃんだ。
 いつものように、ためている。
 ためるとクリティカル率も上がるようだから、それはそれで正解なのかも。

 そして、僕。
「破魔の剣〜」

 火の玉は火属性だから、炎の魔法はダメージが半減。
 ん? ちょっと待てよ。
 前にメラりんと戦ったときは、僕はまだバグがあって、幸運数値がゼロなんだった。
 今は小説を書くのおかげで、99998だ。たしか、前に蘭さんが、幸運の数値は敵のクリティカル攻撃の回避率に関係してると言ってた。
 もしかして、それって、自分のクリティカル攻撃の発生率にも関係してるんだろうか?

 僕は最近の自分の戦いぶりを思いだしてみる。そういえば、二回に一回はクリティカルだったような? とくにザコ敵相手のときには、ほぼ確実にクリティカルを出してたような気がするぞ。

 そうか。今の僕は通常攻撃が七割がたクリティカル攻撃になってしまうんだ!
 ああ、もったいないことした。
 クリティカル攻撃なら、エレメンタル系にも通常攻撃が効いたのに。

 この一ターンのミスが大きく僕らを祟った。

 次の瞬間、火の玉が思いもよらない行動をとったのだ。
 ヒョロ〜とカボタンに近づいていったと思うと、そのまま、すうっと消えてしまった。

「ん? 消えた?」
「戦闘、終わったんですか?」
「でも、まだ、戦闘の音楽のままやで?」
「ですよね」

 そして、テロップが流れる。


 火の玉は憑依(ひょうい)した。
 カボタンがよみがえった。
 カボタンの攻撃!
 カボタンはカボチャ爆発を唱えた!
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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