第322話 誰がヤドリギなのか?

文字数 1,322文字


 次々に押しよせるクラウディ村の人々。
 小さな村だけど、住人はそこそこいたようだ。広場のまわりには千人近く集まっていた。
 大人も子どもも老人も、みんな夢遊病になって、クニャクニャと襲いかかってくる。

 蘭さんたちの馬車はまんなかだ。
 そこまで到達してくる村人は少ない。
 前後の馬車にそれぞれ、ワレスさん、クルウがパーティーリーダーになっているので、押しよせる村人を中央の馬車までよせつけない。

 スゴイねぇ。さすが、ワレスさんだねぇ。
 たぶん、『プチサンダー°˖✧︎◝︎(⁰▿︎⁰)◜︎✧︎˖°』なんだと思うけど、小さな雷を落としまくって、しかもそれを風の魔法で拡散してる。

 プチプチプチ、プチトマト!
 あっ、そうじゃない。
 まきおこる突風の渦のなかで、プチプチプチプチと鼻ちょうちんの割れる音が、いっせいに鳴り響く。
 風がやんだあとには多数の人が倒れていた。プチサンダーのオマケでマヒ状態になっているようだ。

 一回、風が吹きあれると、百人単位の人が倒れていく。
 一騎当千というのは、このことですね。これが千人じゃなく一万人相手だったとしても、ワレスさんなら一人で対処できただろう。

 クルウのほうは——こっちも剣の舞で複数人ずつ倒してる。剣の舞とは言うけど、武器をムチに持ちなおして、村人が大ケガしないよう配慮もされていた。
 ムチ二刀流の剣の舞だ。
 こっちもプチプチプチプチ、プチトマトー!

 これなら、囲みの外のほうは安心だ。
 僕らは苦戦してるようすの蘭さんたちのところまで走っていった。

 そこに行きつくまでのあいだ、一歩走るごとに戦闘音楽が鳴るんだけど、そのたびに、ぽよちゃんが夢遊拳で相手の顔面に頭突きしてくれた。
 夢遊拳には夢遊拳が有効!
 相手のクニャクニャした動きに、こっちもクニャクニャで返すから、夢遊拳特有の回避率を相殺するらしい。
 チャララッと戦闘開始音楽が鳴りかけると、そくざにやむ。鳴りかけるとやむという、くりかえし。

「ロラン! 助けにきたよ!」
「かーくん!」
「ケガはない?」
「ケガはないけど、この人たち、変な動きで攻撃をよけてしまうんです!」
「それは夢遊拳ってやつなんだよ。鼻ちょうちんを破裂させると目をさますから、そのすきに倒すんだ」
「なるほど!」

 プチプチ。プチ。
 プチプチプチプチ、プチトマト。
 プチ。

 それから一時間、僕らは鼻ちょうちんを割り続けた。
 この戦闘、いつまで続くのかなぁ……?
 さすがに疲れてきたよ。

 それでも外殻の村人たちは大半、気絶したようだ。
 向こうから、ワレスさんが走ってくる。

「無事か? ロラン」
「はい。なんとか」
「村人たちは何かにあやつられているようだ。おまえたちが言っていた、ヤドリギのやりかたではないか?」

 僕はポルッカさんの屋敷でのことをくわしく話した。

「あのときといっしょです。村人のなかに、ヤドリギに取り憑かれてる人がいるんです」
「そいつを倒さないかぎり、村人は何度でも起きあがり、襲ってくるわけか」
「まあ、そうですね」

 ワレスさんはマヒかけてたけど、マヒはターン経過で自然治癒するからねぇ。戦闘不能にしても、邪悪な魔法のせいで復活するみたいだし。

 困ったぞ。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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