第247話 強くなるぞ〜
文字数 1,703文字
翌日——
さて、起きてきましたよ。
僕の部屋には、ぽよちゃんとバランがいて、白いのと黒いのと、ぽよぽよにかこまれて目ざめる。
うーん。ぽよぽよだまり!
「ぽよちゃん、くぽちゃん、バラン、おはよ〜」
「キュイ〜」
「キュイ」
「おはようございます。かぐわしき花の香ただよう、よい朝ですね」
今日の予定はギルドに行って、合成屋のおばあさんの仕事依頼を受けてから、特訓のついでに銀晶石をとってくる。街に帰ったら合成。
これで、どんどん強くなれるねぇ。
居間に行くと、すでにほかのメンバーは集まっていた。
「かーくん。銀晶石の森に行くんですよね? 僕も同行していいですか? 魅了の特訓したいので」
「いいけど……仲間モンスターが増えすぎない? スライムばっかりに……」
「モンスターおじいのところに送るしかありませんね」
そりゃそうだ。馬車のなかがスライムだらけになったら困る。
「かーくん。ロラン。今日は市場に行って買い物すうけん、わはやめとくわ。帰ったら畑作りもしたいけん」
「あっ、じゃあ、わたしも残ります」
えっ? スズランさん……?
なんで僕をさけるのぉ?
嫌われてるのかなぁ?
まあ、しょうがない。
気になるけど、しょうがない。
人間は僕と蘭さんだけ。
モンスターをごっそりつれて、お出かけだ。
ギルドに行くと、さっそく仕事斡旋所に。
「こんにちは。合成屋さんの依頼を受けたいんですけど」
受付のおじさんは……これもサンディアナにいたおじさんにそっくりだね。ヒゲはふさふさ、頭はピカピカのマッチョ。
「おう。依頼、受けてくれるのか。ありがとよ。ところで、合成屋の依頼なら、銀晶石の森へ行くんだろ? あの森に関する依頼がほかにもあるんだが」
「どんなのですか?」
「一つは、スライムが異常増殖してるから心配だ。原因を調べてほしい」
「原因かぁ。解明できるかわからないけど、いちおうようす見てきますんで、受けときます」
「おう」
「ほかは?」
「もう一つは、息子のベベロンが銀晶石をとりに行ったまま帰ってきません。どなたか探しに行ってきてください」
「ふうん。じゃあ、それもいちおう受けときます」
「よろしく頼んだぜ」
と、話していたときだ。
出入口の扉があいて、誰かが入ってきた。ふりかえると……ああ、めんどいなぁ。ダルトさんだ。キルミンさんもいる。ほかの二人は知らない人。
「おい、ヤット。合成屋がまた依頼、出してるんだって? おれさまたちが受けてやるぜ」
ものすごい上から目線で、ダルトさんは言いはなった。
まあ、出てくるモンスターがスライムだけなら、彼らでも充分、倒せるに違いない。
「その依頼なら、たったいま、この人たちが受けてくれたよ」と、受付のおじさんが答える。おじさんはヤットさんって言うのか。
ダルトさんは僕らを見て不機嫌になった。
「またおまえか。おれたちの足をひっぱるなと、あれほど言っただろう」
いやいやいや。足ひっぱったの、あんたでしょ? まだ無敗の僕らを、あやうく全滅にさせるとこだったよ?
いくら、事なかれ主義の僕でも、さすがに怒っちゃうよ?
「合成屋の依頼はいつも、おれたちが受けてるんだ。よそ者は手出しするな」
「そんなこと合成屋のおばあさんは言ってなかったですよ。あなたこそ、変な言いがかりつけないでください」
「なんだと。このガキ」
いや、成人してるんですけど……。
「まあまあまあ」と、あいだに入ったのは、ヤットさんだ。
「この依頼は何人でも受けれるんだから、いいじゃないか。二人とも、それぞれに受ければ」
「まあ、そうですね。僕らはただのついでだし」
正直言うと、僕はダルトさんのことをまったく意に介してなかった。
あの戦いぶりを見たあとじゃ、本気で相手にするのがバカらしい。むしろ、哀れ。
どうやって冒険者ランクAになれたのか不思議でならない。
そういうのが態度に出てたのかな?
ダルトさんは憤激で顔を真っ赤にして言いはなった。
「よし。勝負だ。日没までに、どっちがより多くの銀晶石を持ち帰るか競争しようじゃないか」
勝手に決めつけて、ドカドカと足をふみならして去っていく。
あーあ。めんどうなことになっちゃったなぁ。