第141話 現れたゴードンこと豪のゴドバ
文字数 1,035文字
ショックのあまり、僕はしばらく、ぼうぜんとしてしまった。
アンドーくんもヤドリギのカケラから解放されて正気に戻ったとき、そばに猛が立ってるとこは見ていた。なんか言いたそうな目で、チラチラと僕をうかがう。
でも、そこへ、ガラガラと馬車の車輪が街路の石畳をふんで近づいてくる音がした。
ま、まさかキャラバンだろうか?
あわてて、僕はそっちをかえりみた。
違った。
蘭さんたちだ。
「と、とにかく、僕らは行くよ。じゃあ、また!」
僕らはギルドの前でトーマスと別れた。近づいてくる蘭さんたちの馬車にむかって走っていく。
ところがだ。
こういうのって、運命なのかな?
ちょうどそのときを待っていたかのように、反対側の通りからも馬車の音がした。
ああ……あの怪しいキャラバンだ。
黒い幌がもう見るからに禍々しい。
御者台に座って馬車をあやつってるのはピエロだ。
そのうしろにゴドバが立っている。
豪のゴドバは、もう魔物の本性を隠してない。ツノを生やし、デビルマンみたいに青い皮膚の巨人が、ボディビルダーみたいな逆三角形の巨体を誇示するようにそびえたっている。
「いたぞ! 勇者だ。アイツを捕まえろ!」
ゴドバの指さしているのは、僕——またはアンドーくんだ。
蘭さんには気づいていないのか?
でも、このままだと、もうすぐ蘭さんとゴドバが遭遇してしまう。
それだけは、さけないと。
「おっと、勇者の仲間だな。やつらの足止めはおまえに任せたぞ。ピエトロ」
「はいはい。このピエロ・ピエトロめにお任せあれ」
ゴドバの命令で、ピエロは馬車をとびおりる。蘭さんたちのほうへ一直線に走っていく。
けど、なんか変だ。昨夜、夜営地で見たピエロは、もうちょっと背が高かったような? 体つきももっとたくましかったし、細マッチョって感じで、カッコイイ体形だった。
もしかしたら、昨夜のピエロと、今のこのピエロは別人なのかもしれない。
いや、それどころじゃない。
なんでか知らないけど、ゴドバは僕かアンドーくんを勇者だと思いこんでる。
僕は決心した。
蘭さんを守るためには、もうそれしかない。
「アンドーくん。君はぽよちゃんやたまりんをつれて逃げてよ」
「えッ? かーくん?」
僕は走った。
蘭さんの乗る馬車のほうへ、ではない。
その反対側へむかって。
ゴドバの立つ怪しいキャラバンのほうへ——
第三部 完