第180話  平原の王

文字数 1,300文字



 見渡すかぎりの花畑。
 ふみしだく蓮華(れんげ)
 そして、四つ葉のクローバーよろしく、あっちにもこっちにも顔をのぞかせている、僕の金貨たち。
 ふつうに十二、三万ずつ拾うよ。嬉しいなぁ。僕の所持金、一千万超えたんだぁ。これで得意技ランク2だなんて、これ以上ランクあがったら、いったいどうなってしまうんだろう?

 平原の旅はおだやかそのものだ。
 どうも、ここの出現モンスターはほとんどが、ぽよぽよらしい。なので、あのピョコピョコ合戦で、ぽよちゃんがすべてのぽよぽよを下してしまうのだ。

 ぽよちゃんは強い!
 ぽよちゃんは最高!
 ぽよぽよのなかのぽよぽよ。
 もはや、平原の王だ。

 どうもジャンプ力を競ってるらしい。どれだけ高く、素早く跳べるかによって優劣が決まる。

 なので、ぽよぽよと遭遇するたびに、ぽよちゃんがピョコピョコしてくれた。
 そのすきに、こっそり僕は“つまみ食い”するっていうね。姑息とでもなんとでも言ってほしい。
 僕はいただけるものは、なんだって貰うよ? 楽して強くなれるなんて、横着な僕にピッタリの特技じゃないか。
 つまみ食い、美味すぎる〜

 このまま、無傷で滝まで行けるだろうか?
 経験値がかせげないのは困るけど、つまみ食いはゆとりのある戦いでしかできないから、今のうちにたっぷりさせてもらおう。

 見よ! つまみ食いで上がった僕のステータス。
 レベル22にして、HP250『42』、MP185『23』、力75(82)『16』、体力70(77)『14』、知力111『1』、素早さ69『6』、器用さ95『3』、幸運99998。
 レベルアップ三回ぶんくらいは、つまみ食いした。

「なかなか川に出ないねぇ」
「川もだけど、バケモノが出てこらんねぇ」
「そうだね。退治はしないとね。長老と約束したし。そう言えば、レベル上げのための魔物呼びアイテム買ってたよね。あれ使ってみようか。失敗しても、このへんで出てくるのは、ぽよぽよだし。ぽよちゃんが追いはらってくれるから」
「キュイ、キュイ〜」

 僕がミャーコポシェットの背中のジッパーをあけようとすると、それより前に、プッとミャーコの口から、アイテムが一つ吐きだされてくる。魔物の草笛だ。

「えっ? ミャーコが出してくれたの?」

 ミャーコポシェットはゴロゴロ喉を鳴らした。ポシェットのミャーコ化が止まらない。
 じゃあ、ミャーコが出してくれたことだし、草笛、吹くか。

 草笛って地方によって、いろいろ吹きかたがあると思うんだけど、このアイテムは最初から丸めてあってストローみたいになってる。口にくわえて、息を吹きこむと、プペー、プペーとなさけない音がする。

 ん? 何やら遠くから、かけてくるものが。
 なんだろ? ぽよぽよかな?
 いや、違うぞ。
 ぽよぽよにしては大きすぎないか?

 シマシマのトラ猫みたいな獣が四つ足で、ハッハッとかけてくる。尻尾ふりきって楽しそう。
 体長は一メートル……二メートル……うーん、三メートルくらいは……。

「……どんどん大きくなる!」

 三メートルどころじゃない。体高だけでも五メートル。全長は尻尾もよせれば十八メートルはありそうだ。

「出たー! バケモノだ!」
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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