第103話 サンディアナ
文字数 1,096文字
ああ、街だぁー。
始まりの街をろくに歩かないまま追われて逃亡するハメになってから、いきなりダンジョンに次ぐダンジョン。
お城や神殿は通ってきたけど、絶対的に人の数やお店が少ない。娯楽も少ない。
そういえば、ボイクド城にはカジノがあるって、神殿で旅人が言ってたっけな。それって王都の城下町のことかな? 残念。まだ、おあずけか。
いやいや、浮かれるのはあとだぞ。かーくん。まずはコビット族の娘を助けださないと。
それには情報収集だ。
街を歩きまわらなくちゃ。
「ねえ、ロラン。まず宿を決めようよ。それから夕食をとって、市場とかは閉まってるだろうけど、夜だから酒場くらいはあいてるはず。行ってみないとね」
「かーくん」
およっ? 蘭さんが真剣な顔をしてるぞ。
「未成年はお酒を飲んじゃいけません」
「うん。未成年はね」
「だから、僕たちは酒場へは行けませんよ?」
「えっ?」
「えって、なんですか?」
「いやいや。僕、成人だけど?」
「えっ?」
「えって……僕のこと未成年だと思ってたんだ?」
「僕と同じくらいかなぁって」
「ロランは何歳?」
「十八歳」
わあっ。蘭さん、十代。
どおりで、いつもよりさらに線が細くて可愛いはずだ。
現実世界では僕より年上だもんね。
「じゃあ、いいよ。酒場には僕とぽよちゃんで行く。シャケは?」
「おれは仕入れに行かな。ついでに情報も聞き集めてみるわ」
「うん。お願い」
サンディアナは大きな街だった。
街のすみずみまで調べてまわるには、けっこうな時間がかかりそうだ。
とりあえず宿を決めて、馬車をそこに置いた。
夕食は宿のなかにある食堂でとった。
サンディアナは山に近いので、キノコとジビエ料理が名物だ。なかなか美味い。
「じゃあ、僕は酒場に行くよ」
「わ(おれ)も行きます」と、アンドーくんが言うんで、僕はアンドーくんとぽよちゃんとともに、蘭さんたちと別れた。
蘭さんとスズランは美人姉妹みたいで二人にしとくのは心配だけど、蘭さんの強さなら問題ないだろう。
街の民レベルで、どうにかできる相手じゃない。
「ミルキー城下町もガイな(大きな)街だけど、ここも活気がああね」と、アンドーくんも楽しそう。
「キャラバンが見つかるまで、しばらく、ここに滞在することになるかもね」
「そげだね」
ぽよちゃんは昼行性のモンスターだから、ちょっと眠そうだ。
僕はぽよちゃんを抱きかかえて、目についた酒場へと入っていった。
にぎやかな街にふさわしく、客がいっぱい入っている。
さて、誰から話を聞こうかなぁ。