第273話 ふつうにメダル買っても交換できる
文字数 1,394文字
「ちなみに、クィーンドラゴンの鞭は何枚で交換できるんですか?」
「三十万枚ですわ」
三十万枚か。
てことは、メダルをお金で買ったときの値段は、その二百倍。六千万円だね。
買って買えないことはない金額。
でも、それじゃカジノの楽しみがないなぁ。
「じゃあ、今日はとりあえず、年会費百万円を払うので、二十万円ぶんのメダルください」
ほんとは所持金一千万近く持ってるんだけど、ギャンブルにうつつをぬかしていてはいけない気がする。
これは明日の朝、合成するためのお金なんだ。あまったらアイテム買って、残りは寄付ね。
二十万円ぶんでも千枚あるしな。
そこそこは遊べる。
「たまりんも遊んでみる?」
ゆら?
「あっ、やっぱムリだよね」
ゆらゆら。
「じゃあ、いっしょに遊ぼう」
ゆら〜り。
カジノのなかには、たくさんのテーブルやスロットマシンなどがある。
テーブルはカードやルーレットのようだ。
あっ! ぽよぽよだ!
ぽよぽよがレースしてるぞ。
うちのぽよちゃんのほうがお耳にハートもようもあるし可愛いけど、めずらしい毛色の子もいるなぁ。ピンクのぽよぽよとか、パープルのぽよぽよだ。
僕は思わず、かけよった。
「どの子も可愛いなぁ。賭けてもいいですか?」
係のバニーちゃんがニッコリ笑う。
「オッズはこちらになりますよ」
「一番人気はあの白地に黒の水玉もようの子か。ブラックレイン号ね。でも、僕はピンクの子にしよ。色がめずらしいから。染めてるのかな? 名前はピンキーハート号ね」
「あらあら。欲張りましたね。オッズは10倍になります」
別に配当金が欲しいわけじゃないんだけどね。
「いくら賭けますか?」
「じゃあ、十枚」
「では、レースがスタートします。ごらんくださいませ」
ピンキーハートはなんとなく元気がなかった。悲しそうな顔をしてる。
どうしたんだろ?
係のバニーちゃんの笛を合図にして、ぽよぽよたちが走りだした。
ぽよぽよがピョコピョコ。
うっ。可愛い。見てるだけで楽しい。
うちのぽよちゃんなら、もっと早く走るんだけどなぁ。なにしろ、平原の王だから。
五匹のぽよぽよがコースを完走したけど、残念。ピンキーハートは最下位だった。
しゅんとしちゃって、かわいそうだなぁ。
「一位はブラックレイン号。二位はパープルサンダー号でした。1—2または2—1にお賭けになった皆さんには配当金をおくばりいたします」
まあいいや。
可愛いぽよぽよを見られた。
「ピンキー。元気出してけれ。おまえはほんとは強いだがや」
ピンキーハート号をなぐさめてるのは飼い主さんかな?
場違いに麦わら帽子をかぶったおじさんだ。
「どうかしたんですか?」
「ああ、あんた。すまんかったねぇ。ピンキーは前は連戦連勝だったがや。だけんど、足にケガしてから負け続けでな」
「そうなんですか」
「ぽよぽよ草があれば元気になるんだけんどもよぉ」
「ぽよぽよ草?」
「ぽよぽよの大好物だべや。ぽよぽよにとってのオロナミンだべ」
えっ? この人、なんでオロナミンとか知ってるんだ?
この世界にもあるのか?
「ふうん。そのぽよぽよ草は手に入りにくいんですか?」
「前は誰でもとりに行けただけんどもよぉ。モンスターが出るようんなって、近づけないんだべー」
「なるほど。その場所は?」
「サンディアナの竜の岬の近くに自生してるだがや」
サンディアナ付近か。
それなら、明日、寄り道できるかもな。