第46話 ふもとの小屋

文字数 796文字



 這うようにして、僕らは丸太で建てられた小屋まで歩いていった。

 よかった。生きてここまで来れたよ。
 目の前にあるのに、はかりしれなく遠かった。

 小屋のなかには名もなき神父さんが住んでいた。宿屋もかねていた。山越えに入る前の最後の休息所だ。

「このさきにマーダーの神殿があります。ひと休みしてから行かれませんか?」
「ありがとうございます。ぜひ、そうさせてください」

 ヤッター。お昼寝だぁ。
 僕はぽよちゃんといっしょに布団のなかへ入る。
 ゆっくり休んでHPもMPも全回復したあと、神父さんが話してくれた。

「魔王にはとても強い四人の将軍がいるそうです。魔王軍の四天王と呼ばれています。悪のヤドリギ。義のホウレン。豪のゴドバ。そして、裏切りのユダ。彼らを見た者は必ず死すため、誰もその姿を見たことがないという話です」

 なんか、まだまだ序盤の気がしてたけど、けっこうもう中盤に入ってきたのかな? 四天王かぁ。終盤の強敵になりそうな予感だ。
 まあ、まだまだ関係ないだろうけどね。

「怖そうな名前だねぇ」
「そうかぁ? 悪のヤドリギって、なんか、なよっちい感じせえへんか? 絶対、オネエやで」
「豪のゴドバはマッチョですね。力技ガンガンとばしてくるけど、頭はよくなさそう」

 二人とも、まださきのことだと思って、思うがままにディスってる。
 本人の耳に届いたら、半殺しにされると思うよ?

「では、神父さま。ひとときの安らぎをありがとうございました。僕らは出立します。もしも、薬草と毒消し草にゆとりがあれば、少しわけてもらいたいのですが。お金は払います」と、蘭さんが言うと、神父さまはガッツリ、ピースサインを作った。

「裏庭で栽培しております。好きなだけ、どうぞ。ここを通る旅人は必ず買っていきますよ」

 でしょうね!
 けっこう、ちゃっかりしてるよ。神父さま。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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