第241話 小さい魔法から大きい魔法まで
文字数 1,250文字
秘伝書って、どうやって作るのかなぁ?
みんな、死なないでェー! みたいな貴重すぎる魔法もあれば、燃えろ〜なんて初歩的魔法もある。
パラパラと見たところでは、珍しい魔法は少ない。
「秘伝書って、どうやって作るんですか?」
「生まれつき覚える呪文ってあるだろ?」
「ありますね」
「秘伝書にできるのは、アレだけ。おぼえた本人が、白紙の秘伝書に念をこめると、その呪文が写しとられる。強い呪文ほど写せる回数が少ない。そこの『みんな、死なないでェー!』なんかは一生に一回しか写せなかったって話だよ」
一子相伝みたいなものか。
それが口伝じゃなくて、秘伝書を媒体にしてるってわけだ。
「じゃあ、僕も職業つく前に覚えてた『元気になれ〜』とか『もっと元気になれ〜』とかは秘伝書に残せるんだ。でも、白紙の秘伝書って、どこで手に入れるんですか? ここで売ってますか?」
「あるよ。ほんの少しだけ。たまに宝箱から出るだけだ。なんでも大昔、魔法を研究していた古い文明があったんだってさ。そこで作られてた魔法アイテムらしい」
魔法を研究……どっかで聞いたような?
「かーくん。あそこだない?」と、アンドーくんが僕を見る。
「そうか。あの廃墟のお城だね。魔法を研究してたとかなんとか、グレート所長の日記に書いてあったっけ?」
「うん。そげだった気がする」
そうか。そんなすごい場所だったなら、もっとしっかり探索しとくべきだったかなぁ?
「えーと、とにかく、これらの秘伝書は全部、書います。弱い魔法でも、ぽよちゃんとか、モンスターは職業でおぼえられないし。覚えさせると便利かも」
とくに回復魔法や補助系魔法は、下級魔法でも戦闘で役立つ。
「モンスター? モンスターが仲間にいるのか?」
「うん」
「へえ。モンスターは人間の知らない独自の魔法をおぼえるからな。白紙の秘伝書があれば、書かせたらいいかも」
「白紙の秘伝書、少しあるって言いましたよね? 売ってくれないんですか?」
「パーティーに一つしか売れないんだ。値段は十万」
高いけど、これは買っといたほうがいい。そんで、めちゃくちゃ強い魔法を誰かが覚えたときに使うんだ。
「じゃあ、それも一つください」
「いいねぇー。気前いいねぇー。じゃあ、サービスで、これ、やるよ」
魔法使いが奥の棚のなかから出してきたのは、真っ白なカードだ。
「これは白紙の魔法カード。こっちは研究が進んで、王都で製造できるようになったから。と言っても、量産は難しいんで、ふだんは一枚千円で売ってるんだ」
魔法使いは僕らをしっしっと手で追いはらう仕草をして遠ざけてから、カウンターの近くまでやってきた。なげるようにして、三枚ほど白紙のカードを置いた。
「ありがとうございます」
「それも使いかたは、白紙の秘伝書と同じ。ただ、秘伝書と違って、カードなら魔法を封じこめる回数に制限はない。一人が何回でも同じ魔法を封じられる。強い魔法を使える人に頼んで、念をこめてもらうといい」
強い魔法かぁ。
ワレスさんかなぁ。
風属性の魔法いっぱい使ってたよね。