第147話 廃墟からの逃亡
文字数 2,096文字
ぽよちゃんの聞き耳!
昼行性のぽよちゃんだけど、今日はまだ夜の七時すぎなので、なんとか起きている。
竜兵士のHPは100。
行動は通常攻撃とためる。あとは仲間を呼ぶ、か。
ドロップアイテムが黒金の剣、黒金のよろいとある。つまり、彼らの装備品は黒金シリーズということだ。そこそこ攻撃力と防御力が高い。
なんだか、中盤の敵って感じだなぁ。
「ためるはターンが必要だから、一体で出たときは、むしろ歓迎だね。でも、仲間を呼ばれると困る。合体はしないみたいだけど、集中攻撃で倒そう」
チャチャチャン、チャチャチャン、チャチャチャンチャン!
ぽよちゃんの攻撃!
竜兵士に72のダメージを与えた。
むっ? ぽよちゃんでもワンパンでいかないのか。固いなぁ。
とは言え、二回めの攻撃で倒した。
黒金のよろいをゲット。
僕は今、装備品をまとってないので助かった。ドロップしたばかりのよろいをつけて、ミャーコポシェットのなかから鋼鉄のブーメランをとりだす。
いちおう、これで戦えるっちゃ戦える。
僕らは一列になって鉄の扉からぬけだした。
ところがだ。
そのとき、背後の地下から声が聞こえた。
「ひ……非常事態発生。囚人が逃げだしました。お、応援を……要請…………」
ああッ! 仲間を呼びやがった!
戦闘終了後に呼ぶなんて反則じゃない?
「わあッ。逃げよう! 急いで——」
もう足音とか言ってられない。
僕らは全速力で階段をかけあがる。
ふう。ふう。息あがるよ。
ダダダッと突っ走り、一階が見えてきた。広いホールは無人。だけど、奥のろうかから大勢の竜兵士がかけてくる。四、五十体はいる。
わあッ、わあッ、わあッ!
ここで捕まるわけにはいかない。
急げ。急げ。
玄関ホールにさきにたどりついたのは僕ら。でも、竜兵士の集団も向こうの端にふみこんできた。
僕らは追われるままに走った。
竜兵士が来るのとは反対の奥をめざして——
*
「……追ってくるかな?」
「いんやみたいだわ。来らんよ」
「なんとか、まいたかな。よかった。これでどうにか逃げられそう」
玄関ホールの奥は迷路のようになっていた。ここもダンジョンだからね。ダンジョンはたいてい迷路になってるもんだ。
それにしても、これじゃ玄関ホールには近づけない。
玄関の両扉にはカギもかかってるし、ほかの出口を見つけないことには外に出られない。
壁は半壊。
ろうかにも、ところどころ穴があいている。
この状態なのに建物の外壁は人間の出入りできるような窓が一つもない。うんと高い位置にごく小さな明かりとりの高窓があるだけだ。
ゲームの世界って、ほんとよくできてるよね。たぶん、これは地上からじゃなく、上の階層のどこかからしか逃げだせないんじゃないかと思う。または上の階でイベントがある。
ろうかのツボを割ると、たまに小さなコインが見つかるので、くまなく歩きまわる。宝箱は全部ミミックだった。ミミックは僕が相手ね。幸運度マックス手前のラッキーさとクリティカル率で撃破だ。
「お金たまるなぁ。ミャーコが戻ってきてくれてよかった。でも、このくらいの額なら出現モンスターはみんな僕らと同じていどのレベルだね」
「忍び足使っちょうけん、エンカウント率は低いよ」
「助かるよ。ぽよちゃんがそろそろ眠たくなってきたみたいだし」
グルっとまわって、たぶん位置的には玄関ホールのちょうど裏側じゃないだろうかってあたりまでやってきた。
「キュウン……」と鼻をならすぽよちゃんを、僕は抱っこした。
もふもふ、あっかいなぁ。ぽよちゃん。
パーティーは今、僕、アンドーくん、ぽよちゃん、たまりんだから、ぽよちゃんが寝ると三人になってしまう。けっこうな確率で竜兵士が出てくるけど、固いから、主戦力のぽよちゃんがぬけちゃうのは痛い。
せめてもう一人補欠がいてくれたらなぁと考えていると、ナッツが言いだした。
「オレも戦うぜ?」
うーん。なまいき言ってるけど、まだ七歳の少年だ。戦わせるわけには……と思ったものの、念のためステータスを見た。見れたってことは、NPCながら、戦える人物だ。
レベルは15。
HP75、MP15、力25、体力15、知力20、素早さ40、器用さ15、幸運30。
少年なせいか、数値が全体に低い。
あんまりムチャさせられないなぁ。
マジック
呪ってやる〜(๑꒪ㅁ꒪๑)
早く大人になりた〜い゚゚(´O`)°゚
得意技
天涯孤独
思い出
ナッツ
なんだか切なくなってくるような呪文や得意技だ。しかも、ナッツって、名前だよ? 技じゃないからね?
職業は無職。とうぜん職業スキルはない。装備品もない。とりあげられたからね。
「うーん。ムリしなくてもいいんだよ?」
「やるよ。オレ!」
「そうだなぁ。じゃあ、なるべく後衛にいて、ムリしないていどにね。そうだ。僕が前に使ってた装備品があるから、貸してあげるよ。青銅のよろいくらいなら身につけられるかな。武器は何が得意なの?」
「短剣だけど」
「じゃあ、ポイズンダガー貸してあげる」
「ラッキー」
「いやいや。ちゃんと返してよ?」
「へへへ」
へへへって、なんか心配なんだけど。
昼行性のぽよちゃんだけど、今日はまだ夜の七時すぎなので、なんとか起きている。
竜兵士のHPは100。
行動は通常攻撃とためる。あとは仲間を呼ぶ、か。
ドロップアイテムが黒金の剣、黒金のよろいとある。つまり、彼らの装備品は黒金シリーズということだ。そこそこ攻撃力と防御力が高い。
なんだか、中盤の敵って感じだなぁ。
「ためるはターンが必要だから、一体で出たときは、むしろ歓迎だね。でも、仲間を呼ばれると困る。合体はしないみたいだけど、集中攻撃で倒そう」
チャチャチャン、チャチャチャン、チャチャチャンチャン!
ぽよちゃんの攻撃!
竜兵士に72のダメージを与えた。
むっ? ぽよちゃんでもワンパンでいかないのか。固いなぁ。
とは言え、二回めの攻撃で倒した。
黒金のよろいをゲット。
僕は今、装備品をまとってないので助かった。ドロップしたばかりのよろいをつけて、ミャーコポシェットのなかから鋼鉄のブーメランをとりだす。
いちおう、これで戦えるっちゃ戦える。
僕らは一列になって鉄の扉からぬけだした。
ところがだ。
そのとき、背後の地下から声が聞こえた。
「ひ……非常事態発生。囚人が逃げだしました。お、応援を……要請…………」
ああッ! 仲間を呼びやがった!
戦闘終了後に呼ぶなんて反則じゃない?
「わあッ。逃げよう! 急いで——」
もう足音とか言ってられない。
僕らは全速力で階段をかけあがる。
ふう。ふう。息あがるよ。
ダダダッと突っ走り、一階が見えてきた。広いホールは無人。だけど、奥のろうかから大勢の竜兵士がかけてくる。四、五十体はいる。
わあッ、わあッ、わあッ!
ここで捕まるわけにはいかない。
急げ。急げ。
玄関ホールにさきにたどりついたのは僕ら。でも、竜兵士の集団も向こうの端にふみこんできた。
僕らは追われるままに走った。
竜兵士が来るのとは反対の奥をめざして——
*
「……追ってくるかな?」
「いんやみたいだわ。来らんよ」
「なんとか、まいたかな。よかった。これでどうにか逃げられそう」
玄関ホールの奥は迷路のようになっていた。ここもダンジョンだからね。ダンジョンはたいてい迷路になってるもんだ。
それにしても、これじゃ玄関ホールには近づけない。
玄関の両扉にはカギもかかってるし、ほかの出口を見つけないことには外に出られない。
壁は半壊。
ろうかにも、ところどころ穴があいている。
この状態なのに建物の外壁は人間の出入りできるような窓が一つもない。うんと高い位置にごく小さな明かりとりの高窓があるだけだ。
ゲームの世界って、ほんとよくできてるよね。たぶん、これは地上からじゃなく、上の階層のどこかからしか逃げだせないんじゃないかと思う。または上の階でイベントがある。
ろうかのツボを割ると、たまに小さなコインが見つかるので、くまなく歩きまわる。宝箱は全部ミミックだった。ミミックは僕が相手ね。幸運度マックス手前のラッキーさとクリティカル率で撃破だ。
「お金たまるなぁ。ミャーコが戻ってきてくれてよかった。でも、このくらいの額なら出現モンスターはみんな僕らと同じていどのレベルだね」
「忍び足使っちょうけん、エンカウント率は低いよ」
「助かるよ。ぽよちゃんがそろそろ眠たくなってきたみたいだし」
グルっとまわって、たぶん位置的には玄関ホールのちょうど裏側じゃないだろうかってあたりまでやってきた。
「キュウン……」と鼻をならすぽよちゃんを、僕は抱っこした。
もふもふ、あっかいなぁ。ぽよちゃん。
パーティーは今、僕、アンドーくん、ぽよちゃん、たまりんだから、ぽよちゃんが寝ると三人になってしまう。けっこうな確率で竜兵士が出てくるけど、固いから、主戦力のぽよちゃんがぬけちゃうのは痛い。
せめてもう一人補欠がいてくれたらなぁと考えていると、ナッツが言いだした。
「オレも戦うぜ?」
うーん。なまいき言ってるけど、まだ七歳の少年だ。戦わせるわけには……と思ったものの、念のためステータスを見た。見れたってことは、NPCながら、戦える人物だ。
レベルは15。
HP75、MP15、力25、体力15、知力20、素早さ40、器用さ15、幸運30。
少年なせいか、数値が全体に低い。
あんまりムチャさせられないなぁ。
マジック
呪ってやる〜(๑꒪ㅁ꒪๑)
早く大人になりた〜い゚゚(´O`)°゚
得意技
天涯孤独
思い出
ナッツ
なんだか切なくなってくるような呪文や得意技だ。しかも、ナッツって、名前だよ? 技じゃないからね?
職業は無職。とうぜん職業スキルはない。装備品もない。とりあげられたからね。
「うーん。ムリしなくてもいいんだよ?」
「やるよ。オレ!」
「そうだなぁ。じゃあ、なるべく後衛にいて、ムリしないていどにね。そうだ。僕が前に使ってた装備品があるから、貸してあげるよ。青銅のよろいくらいなら身につけられるかな。武器は何が得意なの?」
「短剣だけど」
「じゃあ、ポイズンダガー貸してあげる」
「ラッキー」
「いやいや。ちゃんと返してよ?」
「へへへ」
へへへって、なんか心配なんだけど。