第253話 つまみ食いランクアップ!
文字数 1,625文字
ダルトさんたちのパーティーが全滅すると、彼らと戦っていたゴーレムは僕らのほうを見た。
むっ? 戦う気かな?
しかし、こっちについてる銀ちゃんと向かいあい、何やら独自の交信をした。そのまま立ち去っていく。
「ふうん。銀晶石のゴーレムは、もとから森にいたわけじゃないんだね」
「スライムも急に発生したみたいだし、この森で何かが起こっているのかもしれません」
「ところで、この人たち、どうする?」
僕は四つのカンオケを指さした。
蘭さんは吐息をつく。
「ほっとくわけにもいかないから、一回、街まで帰りましょうか」
「でも、生き返ったら、またここに来るんじゃないの?」
「ああ……じゃあ、僕らが帰るときに、ギルドに引き渡しましょう」
そんな相談で、僕らはカンオケを四つひきつれて歩く。なぜかカンオケってついてくるよね。
そのあとは楽勝だった。
出てくるのはスライムばっかり。
たまに、もともと、この森にいたらしいキツネッコやバンビーノの色違いが出てくる。
宝箱の中身はすべて銀晶石だ。
なるほど。こうやって得るものなんだ。銀晶石。
「銀晶石、けっこう集まったね。このくらいあれば、充分かな?」
「宝箱の中身って一回とったら終わりですよね? 次からはどうやって採掘するんだろう?」
「それもそうだね。ギルドで聞いてみようか」
「銀晶石はこれからも、しょっちゅう必要になりそうですしね」
「それにしても、なんでスライムがこんなに増えたのかはわからないねぇ。行方不明の人にも、さっぱり出会わないし」
「うーん。なんででしょうね。特訓はだいぶ進んだと思うけど」
いいねぇ。スライム相手だと、つまみ食いも苦労しなくてすむよ。
百回近くは戦った。
蘭さんはガンガン仲間を増やしたけど、同種のモンスターって三匹までしか仲間にできないんだね。悲しそうに去っていく背中を何回、見送ったことか。
僕の数値もかなり上がった。
レベルはポルッカさんの屋敷で23になってたんだけど、そのときの数値がこれだった。
レベル23
HP260『46』、MP192『23』、力80(88)『16』、体力74(81)『14』、知力116『1』、素早さ72『6』、器用さ99『3』、幸運99998。
気のせいか、レベルアップでの数値の上がりかたが悪くなった。
つまみ食いでステ上げてるんで、その反作用的なものかもしれない。
レベルアップ時の数値って、けっこう幅がある。力の種とかHPの種のせいで、レベルにくらべて数値が高いと、あんまり伸びなかったりする。
だから僕の幸運の数値が、小説を書くで直して以降、一回も上がらないんだろう。
そのかわり、つまみ食いで好きほうだいに伸ばすことができるようになったからいいんだけどね。
スライムをチューチューして、上がった僕の現在の数値が、これ。
HP295『181』、MP237(260)『68』、力100(80)『36』、体力100『40』、知力118(129)『3』、素早さ98『32』、器用さ110『14』、幸運99998。
ちょっともう、これ、同じレベルの数値と思えないんだけど?
効果が圧倒的にHPにかたよるとは言え、それでもステが上がるのは嬉しい。最初は突出してた知力が、今はもう目立たない。平均的に数値上がった。魔法使いだから力もマイナス補正で20%減少してるけど、それでも商人のころと遜色ない。
ニヤニヤしながら自分のステータスをながめていた僕は気づいたね。
「あっ! つまみ食いのランクが2になってる! ヤッター! 特訓の成果だ。なになに?——」
詳細説明を読んだ僕は目を疑った。
またか。ほんとにいいのか?
なんで、こんなに僕にはチート技ばっかり許されてしまうのか?
そこには、こう記されている。
つまみ食い(ランク2)
敵モンスターからランダムな項目のステータスを2〜5吸いとる。吸いとった数値は戦闘終了後も減らない。
一戦闘で三回のみ使用可能。
ボスにも有効。