第264話 最後の銀行プレゼント

文字数 1,196文字


 デギルさんと飲みだすと長くなりそうだったので、僕はさっさとギルドのほかの用事をすませることにした。

 まずは銀行に行く。
 二億円も持って歩きまわるのは心臓に悪すぎる。

「かーくんさんの貯金が五千万円に達しました。風神のブーツをさしあげます」
「はい。ありがとう」
「かーくんさんの貯金が一億円に達しました。詩神のハープをさしあげます」
「はい。ありがとう」

 あれ? そういえば、銀晶石の巨兵戦で宝箱から得たはずの銀晶石のハープ、けっきょく貰ってないような?

 ゆら〜りと、たまりんがゆれる。
 な、なんと! 銀色のハープを持ってる。いつのまにっ?

 そうか。あの美少女の石像と合体したときか。そういえば、像がハープっぽいものを持ってたような気がする。

 風神のブーツは防御力が30。盾なみの防御力だ。
 しかも、なんか変な付加効果がある。スピードファイターって効果だ。
 なになに?
 戦闘中、歩くたびに『巻きで行こう〜』がかかる。重ねがけ可能。上限1000%まで。

「ええーッ! 歩くたびに? 歩くたびに『巻きで行こう』? いいの? そんなの待機中に足ぶみしてるだけで、どんどん速くなれるってこと?」

 ターン制を無視しためちゃくちゃな効果だ。ゲームバランス、本気で壊す気か?
 最後の理性で書きたされたかのような、重ねがけ上限も1000%って。それ、本来の素早さの十倍まではオッケーってことだよね?
 たとえば僕のスライムチューチューした素早さ数値が98。これの十倍だから、戦闘中マックスで980までは速くなれるってことだ。1ターンで十回くらい行動できるって意味なんだけど?
 こ、これは、さすがに僕が自分ではこう。

「えーと、もう一個は詩神のハープか。あっ、これは装備できるのが、詩神って職業か、それをマスターした人だけだね。じゃあ、今のところ誰も装備できないね。ミャーコのなかに入れとこ」

 たまりんがユラユラしてるけど、装備できないんだから、しかたない。
 たぶん、ハープのなかでは最強なんだと思う。詩神のバラードっていう装備品魔法がついてる。

「かーくんさんの貯金総額が二億六千万円になりました。たくさんの貯金をしていただき、まことにありがとうございます。プレゼントはこれで最後ですが、これからも銀行をよろしくお願いいたします」

 銀行のおじさんが頭をさげる。

 ああ、ついに銀行のプレゼント、カンストかぁ。名残惜しいような、やりとげた感のような。感無量。
 まだまだ貯金はするけどね。
 だって、拾うし。
 ちょっとスライムの森歩いただけで二億円だよ?

 風神のブーツは軽いし、はき心地が抜群にいい。足に負担がかからない。それに見ためも、ふつうにイケてる。
 これでブーツは買う必要なくなったなぁ。これ以上のブーツはないんじゃないかな?

「じゃあ、また来ます」
「はい。お待ちしております」

 胸いっぱいの気持ちで、僕は銀行をあとにした。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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