第255話 銀晶石の森の謎
文字数 1,267文字
それにしても、これだけ戦っても、ちっともスライムの謎も解けないし、行方不明の息子も見つけられないなぁ。
考えながら、森のなかを奥へ奥へと進んでいく。
あっ、またスライムが出た。
ほんとによく出るなぁ。
スライムA〜Fが現れた。
スライムAは逃げだした。
スライムBは逃げだした。
スライムDは逃げだした。
出た瞬間に半分逃げていく。
僕らは残りのスライムに必死で追いすがり、抱きつく。
待ってェー。逃げないで。
僕のプルプルゼリーちゃん。
ストローチューチューさせてぇー。
……ヘンタイだな。僕。
そのときだ。
馬車から、ぽよちゃんがとびだした。
なんだろ?
「キュイキュイ?」
「ピキぃー?」
「キュイ〜」
「ピー」
あれ、ぽよちゃんがスライムCと話してる。両手をスライムのほっぺにあてて、なんとなく再会を喜んでるふうに見えた。
「ぽよちゃん、知りあいなの?」
「キュイ〜!」
そういえば、ぽよちゃんって最初に会ったとき、スライムといっしょに戦闘に出てきたよね。
「そうか。始まりの街付近にいた友達なんだね?」
「キュイ!」
ぽよちゃんの友達か。
ということは、もしかして……。
「ここにいるスライムたち、みんな、もともとは始まりの街付近にいた子?」
「そうかもしれませんね。レベルも低いし、このあたりに生息してるモンスターとは思えない」
「キュイ、キュキュイ、キューイ」
ぽよちゃんが説明してくれるんだけど、さすがにわからない。
困っていると、ぽよちゃんは急に、うしろ足立ちになり、前足でガオーッというポーズになった。
お、怒ったんだろうか?
いや違うぞ。
そのあと小さくなって、プルプルふるえだした。そして、泣きながら逃げだしていく。
「あっ、わかった。つまり、始まりの街の近くに強い魔物、かな? そういうものがいて、怖くて住んでいられなくなったから、スライムたちはみんなして逃げてきたってことなんだね?」
「キュイ〜」
かしこいなぁ。ぽよちゃん。ボディーランゲージができるとは。
「ということは、この森がどうこうでスライムが急増したわけじゃないんだ。異変が起こってるのは始まりの街のほうか」
たぶん、ミルキー城が悪のヤドリギに占拠されてることと関係してるに違いない。出現モンスターも以前とは、ガラリと変わったのかもしれないな。
「じゃあ、かーくん。これでスライムの謎は解けましたね」
「そうだね。でも、あの変な名前の行方不明者が見つからないねぇ。えーと、ペペロンチーノみたいな」
「ベロベロじゃなかったですか?」
「ベロベロはなくない? 人の名前として、どうかと思うよ?」
「えっ? そう?」
「だって、ロランがベロベロって名前つけられたら、どうする?」
「そんなの、イヤ!」
「だよね」
なんか、もうちょっとマシな名前だった気がするんだけど。
「あれ? なんだろう? あそこにあるの、洞くつじゃないですか?」
とうとつにロランが差し示したので、見ると、たしかに巨木の裏に洞穴が隠れていた。
怪しい……。
あそこに行けば、行方不明のベロベロなペペロンチーノがいるのでは?