第69話 安藤くん仲間入り〜
文字数 959文字
池野くんの姿は、またたくまに見えなくなった。もう探しようがない。
「イケやん。どげしただやら? なんか、おかしかったが?」
「うん。池野くんはヤドリギにあやつられたままなんだと思う」
「どげしたら助けられるだらか?」
「もう一回、会って、ヤドリギのカケラをぬきだせば……」
「おれ、いつか必ず、イケノを助ける」
猛が告げた。
「イケノを助けるためには、本人からカケラをとりだすか、ヤドリギ本人を倒すかしないとダメだ。このまま勇者と旅をしていけば、どこかでヤドリギと対決することになる。ただの兵士には命の保証がない道だぞ? それでも友達を助けるために行くのか?」
安藤くんは力強くうなずいた。
わずかの迷いもない。
うんうん。わかってた。
安藤くんはそういう人だよね。
というか、あの村の人たちは村人同士の結束がものすごく強かったしね。
これで、安藤くんは僕らの仲間になった。
「じゃあ、神殿に帰ろうか? 帰りはらくちんだよ。旅人の帽子があるからね」
僕が自慢して言うと、なぜか、猛がさみしげに笑った。猛はいつも、そんなふうに笑う。笑っていても、いつも心の底では悲しみを抱えてるみたいな。
「かーくん。かーくん」と、手招きして僕を呼ぶ。
「うん。何?」
「これ、かーくんが持っててくれ」
猛が渡してきたのは、赤いちりめん生地のお守りだ。かなり古びてる。
「これは?」
「おれが子どものころ、ばあちゃんが作ってくれたお守りだよ。きっと、おまえの冒険の役に立つから」
「いいの?」
「ああ。いいよ。おれは免疫力の特技で必要ないから」
「ふうん」
アイテム画面で確認すると、毒、痺れ、魅了のステータス異常無効の効果がある。これは嬉しいぞ。
「ありがとう! 兄ちゃん」
「うん。兄ちゃんはどんなことがあっても、おまえの味方だから」
そう言って、ぽんぽんと僕の頭を叩いた。
変だな。猛のようすがいつもと違う。
そんな気はしていた。
「早く帰りましょうよ」と、蘭さんが言うので、僕らは一ヶ所に円陣を組んでかたまった。
僕が旅人の帽子をかかげて魔法の呪文を詠唱すると、景色がゆらいだ。
ワープするのだ。
その最後の瞬間、一人離れて手をふる猛の姿が、ぼんやりと見えた。