第42話 アナコンダ戦! 1
文字数 1,698文字
アナコンダのくせに、そいつは尻尾のさきにガラガラを持っていた。この配色もじっさいにいるサンゴヘビに似てるし、いろんな蛇の特徴を集めたようになってるのかもしれない。
ガラガラ、ガラガラと尻尾を鳴らして
蘭さんがこの前のように叫んだ。
「みんな、がんばろ〜」
うーん。何回、見ても可愛いな。
かえすがえすも、夢のなかでくらい女の子でいてくれたらよかったのに。
あれ? 蘭さんが一回しか行動しない。
待機行動してるぞ。
そうか。アナコンダ、素早い敵なんだ。蘭さんでさえ、いつもの二倍速が使えない。
次は三村くんのブーメランだ。
ゴツン、ゴツン、ゴツンと大ムカデ、アナコンダ、大ムカデという、ならんだ順番にモンスターたちを連打する。
ここはゲームのセオリーどおり、両脇のお供を倒さなくちゃ。
しかも、やつら毒持ってるし。
僕は全速力で走っていって、大ムカデの頭をゴツンと叩くと、そのまま走りさる。効いてるかどうかじゃない。とにかく逃げないと。
ん? そのとき、僕は見た。
ぽよちゃんが、ギュウっと目をとじてるのを。
何してるんだろう?
もしかして、これまでの戦闘も、ずっ自分の順番のとき、あのモーションをしてたのかな?
不思議に思ったけど、次の瞬間、ぽよちゃんは、ちょっと嬉しそうな顔で目をあけた。
なんだったのか?
まあ、それどころじゃない。
ぽよちゃんの順番が終わると、次はモンスターのターンだ。
アナコンダ、やっぱり素早い!
シャーッとすごい勢いで体を伸ばしてくる。某有名な蛇のパニック映画なみに速い。じっさいのアナコンダはこんなに速くはないらしいけど、これはゲームだからね。しかも正確に言えば、巨大なのは、アナコンダじゃなくオオアナコンダだ。
ああ、デカイ。
まきつかれたら一巻の終わりだ。
あっ、一巻の終わりだって。
ひとまきの終わり。
ヤダなぁ、もう。
ギャグのつもりなかったんだけど?
伸びあがってきたアナコンダは最初、蘭さんを狙った。けど、蘭さんはアナコンダよりさらに素早い。サッとかろやかなステップでアナコンダの攻撃をかわした。
よかった。アナコンダの初回攻撃はからぶりだ。
蘭さんは迷ったようだが、次のターンも「みんな、がんばろ〜」と呪文を唱えた。蘭さんの笑顔が僕らのやる気スイッチを押しまくる。
三村くんは勢いよくブーメランをなげた。僕が頭をゴツンとした大ムカデはブーメランの直撃を受けて、クタッとくずれおちる。アナコンダにはあんまり効いた感じがない。
でも、これでお供はもう一匹だ。
僕はさっきと反対方向に走った。
残る大ムカデのカチカチ牙を鳴らす口元めがけて、剣をつっこむ。
すぐに走りさろうとしたものの……むっ? ぬけない。剣がぬけないんですけどぉ!
あせった僕の目の前にズルズルとアナコンダが口をあけて迫ってくる。
やだよぉ。また、これ? また食われる? なんか長いモンスターとは僕、相性悪いなぁ。
すると、そのときだ。
誰かがタタタッと走ってきた。僕の前にとびだしてくる。
猛だ。兄ちゃ〜ん。
猛が立ちはだかると、アナコンダはなぜか
困惑ぎみに、かま首をフラフラ動かしている。
そのすきに、猛は僕をひっぱって逃げだした。
助かった。やっぱり頼りになるなぁ。長男は。
そしてまた、自分のポジションに帰ってきた僕は、ぽよちゃんの行動に気づいた。なんか、さっきと同じだ。また目をギュウっとしたあと、少し嬉しそうになった。
あっ、まだ大ムカデの攻撃が残ってたっけ。
ムカデ、どこに行った?
あわてて探した僕はギョッとした。
蘭さんが心配そうに僕と猛を見てる。
そのすぐ真うしろに、巨大なムカデが迫っていた。
「蘭さん、危ない!」
ふりかえった蘭さんは、急いでとびすさった。が、ムカデの牙が足元をかすめる。蘭さんの顔色がまたたくまに青くなっていく。
いけない。
毒にやられたんだ。