第170話  ゴーレム戦! 3

文字数 1,416文字



 身長五メートルに達する石の巨兵。
 地下空間のなかでは、まさに見あげるばかりだ。天井スレスレまで高さがある。

「うぎゃーっ! コイツ、また出やがったよ、兄ちゃん!」

 ナッツは大さわぎしてるけど、僕には気になることがあった。
 このゴーレムは、もしかして……。
 ほんとに戦ってもいいのか?
 後悔することになるんじゃないか?
 いや、でも、これまでのモンスターは戦闘不能にすれば人間に戻った。
 ってことは、いつもどおりに戦って、勝利することができれば……?

「……よし。戦おう。このまま逃げても、きっと、こいつは追ってくる」


 野生のゴーレムが現れた!


 そうか。野生になったんだ。
 すてられたからか。
 切ない。切ないよ。

「ぽよちゃんは通常攻撃。アンドーくんは、みんな巻きでお願い。たまりんはラプソディー。ナッツはナッツ食べて、防御力あげて」
「了解」
「キュイ!」
「へへっ。ナッツ食っていいんだ。好物なんだよ」

 まずは、ぽよちゃんの通常攻撃!
 ためるのほうが、ターンは必要だけど破壊力はデカイ。
 でも、むしろ、あまりにもダメージが強すぎると、ゴーレムを完全に破壊してしまうかもしれない。
 それは、マズイのだ。
 通常攻撃でも申しぶんない攻撃力がある。ピョンピョンと跳ねて、右腕、左腕に一発ずつ、うさぎパーンチ!
 ゴーレムの腕に亀裂(きれつ)が走る。

 えっ? あっけなさすぎないか?
 もしかして、前の戦闘のダメージがそのまま残ってるんじゃ?

 アンドーくんが叫んだ。
「みんな、巻きで行こう!」

 スッと体が軽くなる。
 僕はようす見で、身を守る。どのくらいダメージを与えるべきか考える。

 たまりんは海鳴りのハープにとりかえて、ポロンと鳴らす。
 ナッツは僕のあげたミックスナッツの袋をあけて、豪快にむさぼりくった。

「ウオーッ! 力が湧いてきたぜぇー! やってやるぜ!」

 ナッツはシルバーナイフをかざすと、ゴーレムに向かっていく。
 僕はハッとした。
 ナッツにゴーレムを攻撃させちゃいけない。

「ナッツ、やめろ! 君は攻撃しちゃダメだ!」
「なんでだよっ?」
「だって、そのゴーレムは……」
「せっかくパワーアップしたのに、なんにもしないなんてできるかっての!」

 ナッツは僕の制止も聞かずに、ゴーレムにとびかかっていく。方針円状にヒビの入ったゴーレムの胸に、シルバーナイフをつきたてた。今度は見事に柄まで刃が通る。

 オオーン!——とゴーレムが泣いた。吠えたのかもしれないが、僕には泣いているように聞こえた。

 ゴーレムは抗いたいのに攻撃の衝動に抗えないかのようだ。亀裂の入った両腕をふりあげる。
 あの攻撃が来る。
 フルスイングアームアタック!

 ナッツがつきとばされた。
 でも、ゴーレムはもう限界のはずだ。
 次のぽよちゃんの攻撃で……。

 えッ? どういうことだ?
 ゴーレムの体が赤く光った。
 そして、続けてフルスイングしようとしている。
 なんでだ。ゴーレムのターンはもう終わったはず。

 僕は急いでぽよちゃんに聞き耳をしてもらった。
 ゴーレムの行動パターンのなかに、最期のバカ力ってのがある。瀕死になるととる行動のようだ。
 ひとことで言えば、死ぬ直前の暴走。ターンに関係なく暴れ続ける。

「ナッツ——!」

 ナッツが二回めのフルスイングを受けた。全ステータスが上がっているとは言え、HPが三分の一にまで減った。もう一回あびれば戦闘不能だ。

 ゴーレムが両腕をふりあげる。
 早く、なんとかしないと!
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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