第164話 地下水道

文字数 1,013文字



 竜兵士が向かったのは地下だ。
 ただし、牢屋のあったのとは違う場所。
 一階と二階をつなぐ階段のある、あのプチホールの奥に、地下へ続く隠し階段があった。竜兵士が彫像の一つをさわると、スイッチになっていて、ガタンと壁の一部がスライドした。

 こんなとこがあったなんて。うまく隠されてて、ぜんぜん気づかなかったなぁ。

 僕らは隠し扉が閉まる前に大急ぎで、竜兵士のあとについていく。ぽよちゃんには僕らが見えるらしくって、おとなしく竜兵士に抱っこされていた。
 ちなみに、僕らっていうのは、僕、アンドーくん、たまりん、ナッツだ。

 隠し扉に入っていくと、地下への階段があり、その下には地下水道が通っていた。水道っていうか、下水道だよね。お城で使う下水や、しみだす地下水などが一メートル幅の溝のなかを流れている。その片側または両側に、人間が一列で歩いていけるほどの敷石された側道があった。

 竜兵士はそこで止まると、ぽよちゃんを側道におろす。

「ほれ。行っちまえ。運がよければ外に出られるだろうよ」

 ケケケと笑って階段をあがっていく。
 やっぱり外に通じてるんだ。
 竜兵士の足音が遠ざかり、ガタンと一階の壁が閉まったらしき音がする。

 僕は安心して、ぽよちゃんを抱きしめた。

「ぽよちゃ〜ん。身代わり、ありがとう。助かったよぉ」
「キュイ〜」

 朝が近いのか、ぽよちゃんは元気いっぱいだ。ようやく主戦力が復活した。
 ナッツはNPCだから、僕ら四人のパーティーとゲストのナッツで戦うことができる。

「じゃあ、外へ通じる出入り口を探そう。くずれた穴とかかもしれないけど、出られるとは思うんだ」

 なぜなら、地下水道はダンジョンになっていたから。ちゃんと小銭が落ちている。つまり、僕らはストーリーを正しく進んでいる。

 地下牢に入れられてた人たちも、きっといつか救いだそう。モンスターにされても戦闘で気絶させたら人間に戻った。必ず助けることができる。

 そんなことを考えながら、歩きはじめたときだった。また上のほうで、ガタンと音がした。隠し扉がひらく音だ。

「ほら、歩け! おまえはもう用なしだとよ」

 僕ら以外にも誰かがつれてこられたのか? 激しく気になる。

 僕らは階段のところまでひきかえしていった。でも、袋小路がいっぱいあるせいだろうか?
 僕らが戻ったときには、そこには誰の姿もなかった。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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