第262話 美少女の石像
文字数 1,395文字
僕らがベベロンさんを石にすると、銀ちゃんはおとなしくなった。
チャララッチャチャー!
銀晶石巨兵を倒した。
経験値2000を手に入れた。
2000円を手に入れた。
銀晶石巨兵は宝箱を落とした。
銀晶石のハープを手に入れた。
銀晶石のハープ?
そんなのないんですけど?
お金は銀ちゃんが自ら、ププッと吐きだした。
どうやら、僕らのことを認めてくれたようだ。
「銀ちゃんはこの像を持っていかれないように守ってたんだね。ごめんよ。わかってたら攻撃しなかったんだけど」
銀ちゃんは首をクルクルと二回まわした。いいよ、いいよと言ってるようだった。
蘭さんが思案する。
「この像、どこか別のところから運ばれてきたんじゃないですか?」
「そうだね。もとに戻しておこう」
あたりを見まわすと、奥の壁にくぼみがあって祭壇のようになっている。
僕と蘭さんは力をあわせて、そこまで台車を運んでいった。石像を祭壇に置き、布をとりはらう。
なかから、ものすごい美少女の像が現れた!
おおー! 美しいですねぇ。
美しい……でも、なんだろ?
誰かに似てる。
以前に見た幻のたまりんに……?
「なんで、こんなところに石像があるんでしょうね? ここは古代の遺跡みたいだけど。古代にあがめられた女神の像でしょうか?」
蘭さんの言葉に、僕は答えることができない。
僕にも真実はわからない。
かつて、この場所がなんだったのか。
でもきっと、古い時代の大切な何かだったんだろうな。
宗教上の神殿のようなところだったのかも?
あれ?
神秘的な銀晶石の像を見つめる僕らのよこを、なんかフワフワしてる。
あっ、たまりんか。ビックリした。火の玉かと思った。いや、火の玉だけど。
すうっと奥の祭壇のほうへ、たまりんは飛んでいく。
「……たまりん?」
たまりんは銀ちゃんの肩の上を飛びこえ、祭壇のなかへ入った。
たまりーん? 帰ってきなよ。
キレイな石像だからって、そんな近くで見てたら、また銀ちゃんが怒るよ?
と思って見てたら、ああー!
たまりんが、たまりんが消えた?
いや、石像のなかに入りこんだ?
胸のあたりが、ぽうっと光ってる。
その光がどんどん大きくなって、石像全体を包んだ。
なんだか石像が……目の錯覚か?
光のなかでそれは石ではなく、人の姿になっていた。
やっぱり、あのときのたまりんだ。
巻き毛の金髪の薄紫色の瞳の美少女。
人間っていうよりは妖精みたい。
「かーくん。ここまで来てくれて、ありがとう。あなたやお兄さんや、ほかの多くの人たちをこの世界に呼びよせたのは、わたしです。今、この世界は滅びの道を歩み始めています。それを止めることができるのは、この世界にはない力を持つあなたがたです。どうか、世界を救ってください。あの人の呼びよせる滅びの火が、すべてを焼きつくす前に。あの人の心に巣食う憎しみの炎を消しとめてください。どうか……お願い……」
ぽわーっと、像から光が失われていく。
フワフワと、たまりんが出てきた。
うーん? 今のは?
たまりん? たまりんのほんとの姿?
それとも、たまりんはただの得意技を使っただけ? 憑依からのあやつるで像の記憶を僕らに見せてくれた?
てかさ。
大事なのは、そこじゃないのか?
今のがほんとになら、僕と兄ちゃんはこの世界の誰かに、異世界召喚されたってことなのか?
ただの夢じゃなかったのかなぁ……?