第55話 精霊王のよろい
文字数 1,088文字
プラチナの台座に星のカケラのようなキラキラしたブルーの宝石が埋めこまれた腕輪を蘭さんがつけると、とてもよく似合った。
さて、では銀行をあとにして——って、あれ? 兄ちゃんがいない。どこに行ったんだ? まあいいか。神殿のなかを見学してるんだろう。
「じゃ、防具屋だねぇ」と言った僕だけど、そのとき、ふと思いだした。
この神殿になんかスゴイよろいがあると、誰か言ってなかったか?
「精霊の……よろい?」
「精霊王のよろいですよ。この神殿にあると、さっき旅人が言ってましたね」と、蘭さん。
「どこにあるんだろう?」
「まだ僕らが行ってない場所でしょうね。お祈りの間とか?」
「なるほど」
どうせ就労できないし、イベント起こると困るから、あとまわしにしてた。
恐る恐る、広いホールに入っていくと、そこにも何人か人がいた。
みんな右往左往している。
「ああ、どうしよう。巫女さまがいなくなってしまった」
「巫女さまは祈りのお力が誰よりも強いのだ。あのかたの祈りなら、今は誰もなることのできない職にでも、いつか転職できるようになるかもしれない」
「巫女さまの師匠にあたるマリー神官は高齢でな。今は体調をくずされて、ふせっておられる」
「この神殿の東に聖女の塔があるのです。昔はそこで巫女たちが修行したそうですよ。今は長いこと使われていませんが」
「聖女の塔を出入りする者がいたと言う人がいるんだよ。そんなはずないのにね」
あっ。ここでヒントか。
たぶん、巫女姫はその聖女の塔に捕まってるんだな。
しかし、その前に神殿のお宝だ。
僕は祭壇のよこに飾られた、それはそれは美しいよろいを見つけた。
ガラスのように半透明で、キラキラ光って、すごく華奢な印象。
とてもスリムなよろいだ。
こんなに儚げでいいのか?
戦闘で使えるのか?
でも、なんだろうか?
不思議な力をそのよろいに感じる。
近くに立っていた神官が言った。
「これは伝説の精霊王のよろいです。選ばれた人にしか装備できませんが、魔法ダメージを三分の一に抑えてくれます。こう見えて鋼鉄よりも固いんですよ」
そんなバカな……。
「信じてませんね? ほんとですよ——うりゃっ!」
神官はとつぜん頭のたがが外れたように、こん棒でよろいの胸を叩いた。
ああ、割れるーと僕は思った。が、
「ほらね」
ヒビ一つ入ってない!
僕は見たね。
仲間ステータス画面で確認すると、このよろいは蘭さんにしか装備できないことを。
たぶん、これ、勇者専用装備の伝説シリーズだ。