第115話 気がつけば3ターン後

文字数 1,078文字


 ハッと気がついたとき、すべては終わりかけていた。
 僕のまわりで、みんなが倒れている。
 アンドーくん死亡!
 ぽよちゃん死亡!
 僕のHPは一桁だ。
 そう。つまり、全滅寸前である。

 ええー! いつのまに?
 あれ? 人面樹が歌ったあとの記憶がない。
 もしかして、寝てた?
 寝てたかも?

 モニターを見ると、どうやら四ターンめの人面樹の攻撃が終わった直後のようだ。
 やられた。さっきのあれ、子守唄だったんだ。人面樹って眠り攻撃をしてくるやつだったのかッ!

 ど、どうする? 誰かを生き返らせる?
 いや、でも、フェニックスの灰って、HP満タンで蘇らせてくれるんだっけ?
 ちょっとカバンのなかをたしかめて説明を読んでみた。
 ダメだ。HP半分でって書いてある。
 蘇生しても、すぐにやられちゃうかも。

 とりあえず僕が自分のHPを回復させるべきか? それだと「もっと元気になれ〜」で回復できるのは最大HPの半分ほど。
 うーん。それならいっそ戦闘離脱か?
 ちゃんと逃げだせれば、みんなを生き返らせることはできる。

 そのとき、僕の脳裏をアナコンダ戦のときの蘭さんの言葉がよぎった。


 ——このまま毒を消して回復してをくりかえしていても、いつまでたっても攻撃できません。回復はせず、次のターンで攻撃をたたみかけましょう。


 やるしかないのか?
 僕のクリティカル一撃で、人面樹一体を倒すことは可能だ。
 いや、たまりんの「冷たくなれ〜」のダメージがあるはずだから、クリティカルにならなくても、運がよければ倒せるかも?

 賭ける……しかない。
 僕は自分の運に賭けてみることにした。前に一回、それで失敗してるけど、今度こそ——

「とぉーッ!」

 気合いだけは充分。
 が……。

 あ、ありゃ?
 スカッって……スカッって。
 クリティカルとか通常攻撃とかの問題じゃなかった。
 攻撃よけられたー!
 ああ、もう終わった。次のターンで僕、()られちゃうー!

 猛ぅ。なんでいなくなったんだよぉ。
 兄ちゃんがいてくれれば、こんなことには……。
 ばあちゃんの御守り、睡眠の状態異常は無効じゃないからね。

 僕が拾った小銭の行方を思って涙をこぼし(そうになっ)ていたときだ。
 何かが足元でゆらりとした。

 あっ、たまりんだ。
 たまりんは死んでなかったのか。
 すうっと、ぽよちゃんの体に入っていく。
 憑依だ。
 たまりんの憑依発動だ。
 憑依の次は?


 たまりんがぽよちゃんに憑依した。
 ぽよちゃんが蘇った。
 ぽよちゃんの攻撃!
 人面樹に105のダメージを与えた。
 人面樹Cを倒した。
 戦闘に勝利した!


 よ、よかった。
 ギリで勝てた……。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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