第348話 ボックス会議

文字数 1,229文字



 鏡の間にパッと見、出入口がないことを、僕は手紙に書いた。
 すると、しばらくして、蘭さんから返事があった。

『ミルキー城の最下層には、からくり部屋があったはず。細長い長方形の両端の壁にスイッチがあるので、それを同時に押すと両側の壁が上がる——と、以前、父上から聞いたことがあります。大昔の秘密の宝物部屋だったらしいです』

『両側ってことは、僕らとクルウさんの隊がその壁の前に行かないといけないってことだね?』

『そうなります。王家の人間だけは、その両端ではない壁のどんでん返しを作動させて自由に出入りできますが』

『鏡のかかってる壁がまわるってことだね。ブラン王は毎晩、そこから出入りしてるんだ』

『おそらく』

『私たちの隊はこのまま地下を探索します。その扉の前へ行けば、すぐにわかりますか?』

 おっと。クルウだ。

『まわりは暗いけど、鏡の間には松明がついてる。光のもれる場所を探せばわかると思う』と、僕は書いた。

 蘭さんからも、こんな助言が。
『スイッチが一角獣の首になってるそうです。僕も見たことありませんが』

『了解しました。それらしき場所を見つけたら、この方法でまた連絡いたします。城内にモンスターはいなかったが、地下に入ったとたん、ガーゴイルや竜兵士が出てきました。魔王軍の雑兵が巣食っているようです。ご注意を』

『僕らは地下牢から続く洞くつに入ったので、たぶん、クルウさんの侵入経路とは異なる場所を歩いてます。なので、このまま進んでいけば、別々の方向から合流ことになりそう。鏡の間の両端で出会える可能性が高いかな。僕らの側の敵モンスターは野生の火属性モンスターで、魔王軍ではないようです。こっちも何かあったら知らせます。んじゃ!』

『かーくん。気をつけてね。僕は兄上と宴で会食するけど、今のところ、兄上のようすは普通みたい。以前から頑固だったから、あやつられてる感じはしなかったけど……』

『クラウディ村のこともあるから、昼間は普通に見えても、夜になったらおかしくなるかも。ロランも気をつけてね。バイバ〜イ。そろそろ行くよ。クピピコはまだ活躍してもらうかもしれないから、もう少しのあいだ、こっちにいてもらうよ』

『わかりました』

 ボックスのなかが手紙だらけになっていく。
 チャットと違って、読んだら返しておかないと別の隊の人が読めないからね。

 ワレスさんの手紙がないと思ったら、そうだった。ワレスさんはスズランと心話で会話だっけ。

 それにしても銀行さん、いいものくれたなぁ。便利。便利。

「じゃ、休憩もとれたことだし、そろそろ行こうか?」
「かーくん。ぽよちゃんが眠たそうだが」
「そっか。外はもう日が暮れたんだね」

 僕はぽよちゃんを眠りのパジャマセットに着替えさせた。とたんにトロンとなるぽよちゃん。鼻ちょうちん。可愛い。

「しょうがないねぇ。アンドーくん前衛になってよ。ぽよちゃんは後衛ね」
「キュイ……」

 ぽよちゃんを猫車に乗せて、僕らは深い闇のなかへと、ふたたび歩きだした。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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