第281話 ガブキング戦!4

文字数 1,059文字



 僕はガブキングのところまで全力疾走だ。
 おおっ! 速い。速い。
 自分とは思えない。
 おまけに身軽になるって、こういうことなんだな。ジャンプ力がいつもと、まるで違うぞ。
 ぽよちゃんなみに跳躍すると、思いっきりレプリカ剣を水平になぐ。キレイにガブキングの触手が十数本、切り落とされた。さらに装備品魔法の『燃えつきろ〜』!

 ケエーーーーン!

 ガブキングは奇声を発して炎に包まれた。
 まだまだ。
 僕の番は終わってない。ぜんぜん余裕で動けるぞ。
 やっぱ、このブーツ、ゲーム的にはダメなやつでしょう。バランス崩壊、起こしてるよね?

「えーい! やあーッ!」

 縦横無尽にかけぬけて、僕はガブキングを切り刻んだ。
 僕が剣をひとふりするごとに、ガブキングの花が散る。追い討ちの炎攻撃も容赦なく浴びせる。


 ガブキングは倒れた。
 経験値1800を手に入れた。
 六百円を手に入れた。
 ガブキングは宝箱を落とした。
 ぽよぽよ草の種を手に入れた。


 レベルアップの音が響き、ケロちゃんがレベル10になったようだ。

「ぽよぽよ草の種? これかな?」

 ガブキングの頭のなかから、朝顔くらいのコロコロした種がたくさん出てくる。ガブガブ草って、まさか、ぽよぽよ草のモンスター化したやつなのか?

 そのころになって、ぽよちゃんたち、やっと満足したのか帰ってきた。なんか毛並みがツヤツヤしてる。

「ぽよちゃん。ダメだよ。勝手に行っちゃったら」
「キュ、キュイ……」

 ご、ごめんと言ったみたいだ。
 バランが謝罪しながら説明した。

「申しわけない。ぽよぽよ草は、ぽよぽよにとって理想的な栄養価をふくんだ草なのです。ぽよぽよ草を食べさせると、次のレベルアップのとき、ステータスの伸びが格段によくなります。なので、ぽよぽよには定期的にぽよぽよ草を与えるといいのですよ」

「へぇー。そうなんだ。じゃあ、この種、育てるといいね」
「あっ、そげなら、その種、わにごさん? 畑で育てぇけん」と、アンドーくん。
「うん。お願い」

 畑で育ててもらえば、毎回ここまでとりにくる必要がなくなるもんな。

 今日のところは、ピンキーハート号のために、いくらかのぽよぽよ草をつんで出立することにした。

 ところがだ。

「ロラン? 行くよ?」

 蘭さんが立ちつくしたままなので声をかける。と、蘭さんはとつぜん、その場にすわりこんだ。

 えっ? えっ? なんだ?
 ケガでもしてるのか?

「ロラン? ど、どうしたの?」

 僕がその肩に手をかけようとすると、蘭さんはふりはらった。
 僕は見てしまった。
 蘭さんの目に涙が光ってる。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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