第137話 密室に忍びこむには?

文字数 1,099文字



 困った状態だ。
 現状を整理してみよう。
 家のなかにはトーマスが一人で捕まっていて、見張りはいないけど、予断をゆるさない。すぐにもホワイトドラゴンのウロコで治療しないと命が危険。

 そして、同じ屋根の下にはとんでもなく強い魔王城のボスクラスの敵、ゴードンがいる。アイツと今、戦うことはできない。全滅することが目に見えている。僕らが全滅したんじゃ、結果的にトーマスも助からないしな。

 そうなると、なかにいるゴードンに気づかれないように、こっそり家のなかに侵入して、トーマスをつれださないといけない。

 さて、どうしようか?
 窓にはカギがかかってる。
 玄関側はゴードンがいる。
 裏口もたしかめてみたけど、やっぱり、なかからカギがかかっていた。モンスターのくせに戸締まりがしっかりしてるなぁ。

「うーん。窓ガラスを割ったんじゃ音がするしな。ゴードンがかけつけてきてしまう」

 アンドーくん一人なら、もしかして隠れ身で相手に気づかれずに、なかへ入れるんだろうか?
 でも、さすがにゴードンのいる玄関口から侵入してくれとは言えない。万一にも見つかったら殺されてしまう。

 僕が頭をかかえていると、ぽよちゃんの背中からちっちゃい声が聞こえた。

「クピクピ。クピピコ、コピコピピコー」

 ぽよちゃんの首に巻いた風切るバンダナを手綱(たづな)がわりににぎったクピピコだ。コビット語はわからないけど、クピピコがどうとか言ってることだけはわかった。

「ん? 何?」
「クピピコ、コピコピピコー」

 もしかして、クピピコが忍びこむよと言ってるんだろうか?

「クピピコが行ってくれるの?」

 うんうんと、クピピコはうなずいた。
 自分のベルトから針みたいな剣をぬいて、なにやら天にかかげている。
 この剣にかけて、とかなんとか言ってるのかな?

 そういえば、初めにコビットたちと戦ったとき、戦闘報酬でコビットの剣を手に入れたけど、使わないから戦士の手に戻してやったんだよな。

「そうか。剣を返してあげたお礼に、今度は自分が役立つよと言ってるんだね?」
「コピ〜」

 あっ、ちょっとコビット語わかった。

「コピクピ。ピピコクピ」

 あっ、やっぱりわからない。

 でも、なんか窓のカギを指さしてるぞ。窓の上部の飾り格子の部分も。
 ん? この飾り格子の部分、一ヶ所ガラスがぬけおちてる。
 なるほど。ここからなかへ侵入して、窓のカギをあけるつもりなんだ。

「わかったよ。クピピコにたのむ。カギさえあければ、なかへ侵入できる」

 クピピコは小さな手で、ドンと胸をたたいた。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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