第201話 ワレスさん戦!3
文字数 1,806文字
やっぱり強いなぁ。
一番弱い魔法を一発くらっただけで、死にかけてしまうなんて。
プチなのに、ぜんぜんプチじゃないじゃん!
次の僕らのターンはもう回復一辺倒だ。たまりんが「みんな、元気になれ〜」を覚えてくれたんで、それを使いつつ、僕の元気になれと、アンドーくんの世界樹の枝先で、どうにかこうにか持ちなおす。ぽよちゃんには回避のために、はねさせておいた。
こっちから攻撃しかけても、僕の傭兵呼びで倒せないことがわかってしまったからね。それよりは最初の目標どおり、3ターン持ちこたえることを優先しよう。
さあ、2ターンめのワレスさんの攻撃だ。次は『ハリケ〜ンヽ(*´^`)ノ』だった。祈るような表情で両手をひろげたこの仕草は、ちょっと見てみたかったんだけど、やってくれない。自己流だ。
「ギャー! 効いたー!」
「あっ、かーくん。ぽよちゃんが!」
「ああッ、ぽよちゃんの装備は魔法ダメージ軽減してくれないもんね」
ぽよちゃんは目をまわして倒れてしまった。HPが僕やアンドーくんほど高くないからなぁ。
たまりんもHP低いけど、装備品で魔法から守られているので、瀕死ながら、かろうじて残った。でも、今回でギリだ。これより強いっていう次の魔法攻撃には耐えられない。
「うーん。次は僕らも危ないかも」
「一人でも残ればいいなら、わは隠れ身使うけど?」
「あッ。そうか。その手があったか」
「ただ、戦闘中の効果は移動中と違うけん。仲間までは隠せんよ。自分一人がターゲットにならんだけだわ」
「てことは、僕とたまりんは犠牲に……まあ、一人だけでも残れば全滅じゃないね。次が最後のターンだ。僕はワレスさんの行動回数を減らすために、もう一回、傭兵呼びをやってみる。運がよければ、倒せるかもだし」
という作戦で、そのように行動。
でも、結果は前回と同じ。
やっぱり、ワレスさんを失神させるまでにはいたらなかった。
「ダメか……」
でも、アンドーくんは隠れ身で姿を消した。これで、なんとかあと1ターン、やりすごせるか?
願いは虚しかった。
ワレスさんの目がキラリと光ると、なぜかアンドーくんの居場所がわかってしまったようだ。
そうだった。ミラーアイズは透視ができるんだったっけ。
「オーロラバースト。雷神の怒り!」
それは日本語なんだ!
二連続魔法が僕らを襲う。
目の前がオーロラととびかう雷で覆いつくされる。
気……失いましたね。うん。
*
僕らはワレスさんの蘇生魔法で意識をとりもどした。
「ああ……負けたぁ。3ターン持たなかったぁ」
僕はガッカリしたけど、ワレスさんは笑ってる。
「いや。はなから1ターン持てばいいと思っていた。3ターンめまで戦えることが立証できただけで充分だよ。これなら戦力になる」
「ほんとですかっ?」
「ああ。頼りにしてるよ」
「はい! がんばって、たくさん小銭拾います!」
「そうだな。あれがさっきの三倍のダメージだったなら、おれでも倒れていた。1ターンでケリがついてただろう」
そうかぁ。百万円持ち歩いてれば、ワレスさんにでも勝てたのか。惜しい。
「ではな。おれは今後の戦略を練るために会議室に戻るが、おまえたちは城内を自由に見物するといい。それと兵舎の一室をおまえたちの部屋として用意させておく。もしも用があれば、東の内塔のおれの部屋に来てくれ。部下に伝言を残してくれれば、時間を作る」
「ありがとうございま〜す」
立ち去りかけたワレスさんだけど、ふと思いだしたように帰ってきて、小声で耳打ちする。
「残念ながら、わが国にも派閥争いがある。勇者のことも、今回の作戦に関しても他言はするな?」
「わかりました」
そうか。派閥かぁ。
人間の集まるところには、どうやったってあるんだね。
とくに王宮なんて、陰謀と奸計と嫉妬と羨望と野心のうずまく場所だ。
もしかして、だからこそ、ワレスさんはコーマ王の近衛騎士なんてしてるのかな?
宮廷のみにくい権勢争いから、自分のお気に入りのお人よしの王様を守るために?
ワレスさんは微笑を残して去っていった。
あんだけ戦ったあとなのに、ふわりと森林のなかの風みたいな香りがするんだよ、この人。マイナスイオンを感じる。
はぁ……僕もワレスさんみたいになりたいなぁ。ムリかなぁ? ムリだろなぁ。つまみ食いで小銭拾いで泣きマネの僕じゃ。
気をとりなおして、城内の探索だ〜!
えへへ。
なんか、いいもの見つかるかなぁ?