第250話 銀晶石のゴーレム

文字数 1,333文字



 大きさは以前、僕がアンドーくんたちと廃墟で戦ったゴーレムより小さい。いや、もっと言えば、

小さい。あれの四分の一ていどだ。つまり、およそ1.5メートルほど。僕や蘭さんより小さい。
 それにしても、ゴーレムはゴーレムだし、銀色のボディーがギラギラして目に痛い。

「派手なゴーレムだなぁ」
「あのボディー、もしかして銀晶石なんじゃないですか?」
「そうかも」
「メンバーが三人じゃキツイかもしれませんね。バランに出てきてもらいましょう」
「あっ、でも、聞き耳したいな」
「ケロちゃんに下がってもらうのが無難かな。レベル1だし」

 ケロちゃんをさげて、ぽよちゃんとバランを出す。これ正解。
 しかし、ケロちゃんが聞いてくれなかった。知力が低いんで、命令を聞いてくれないらしい。新しい服を着て、新しい武器を持ったんで、嬉しくてテンションが上がってしまってるようだ。

 しかたなく、バランに出てきてもらって、とりあえず、かばうと守るをキープする。

 ターン開始時。
 ケロちゃんの自動石化攻撃!
 が、銀晶石のゴーレムはあざ笑うように、首をクルクル回転させた。

 あっ、思いだしてきたぞ。
 ゴーレムの得意技は両腕をふりおろしてのグルグルボディー回転フルスイングだった。
 たぶん、このチビっこいゴーレムも似たような技を使うんだ。

「石化、効かなかったみたいですね」
「うん」

 薔薇が舞った。
 アロマの香り〜
 でも、これもゴーレムには効いてるふしがない。

「目くらまし、かからないタイプかな?」
「そうかも」

 でも、まあ、薔薇の優秀なところは、味方の攻撃力を上げるところだ。もっと、がんばろ〜の効果は嬉しい。

「ねえ、かーくん。こいつ、魅了が効くのかな?」
「やってみたら? 僕もチューチューしてみる」

 バランがいるし、敵も一体だけだし、少しくらい遊んでも負けることはないだろう。

 蘭さんはゴーレムの前にひざまずいて両手を組んだ。

「ねえ、銀晶石のゴーレムさん。僕たちといっしょに戦わない? 仲間になって旅に出ようよ?」

 ゴーレムは頭をグルグルまわした。
 これは、きっと『ノー』の意味なんだろうな。

 蘭さんはあきらめない。
 なにしろ四回行動できるんで、しつこく勧誘する。
 ちょっと小首をかしげて、うるんだ目で見つめる攻撃に出た!
 人間なら一発でキマってるんだけど、ゴーレムは首グルグル。
 やっぱり石だからかなぁ?
 人間と違って“心”がないのかもしれない。

 蘭さんの行動が終わった。
 蘭さんは悔しそうな顔つきで、待機行動に入る。

 次はバラン。
 バランは迷ってる。

「誰に守るを使いましょうか? 二回行動はできるようです」
「ケロちゃんが弱いから、守ってあげてください。もう一人は僕か、かーくん」
「ロランでいいよ。僕ら、状態異常にもならないし、ゴーレムの攻撃がどんなものでも、そんなに苦戦はしないと思う」
「では、私は勇者ロランをお守りいたします」

 バランは守るを蘭さんとケロちゃんに使った。
 次は僕の番だ。
 さ、ストロー刺して、チューチューと……チューチューと……?
 ん? ストロー刺さらない?

「こいつ、固いんだけど!」

 つまみ食いは不発に終わった。
 おかしいな。これまで不発なんてなかったのに。
 どうしちゃったんだ? 僕?
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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