第261話 銀晶石巨兵戦!5

文字数 1,312文字



 今度こそ、銀ちゃんもノックアウトでしょ?
 と思ったんだけど、銀ちゃん、バラバラになりながらも腕がモソモソして、ミダスタッチをやった。

 銀ちゃん、復活ー!

「傭兵呼び〜!」

 銀ちゃん、復活ー!

「傭兵呼び〜!」

 銀ちゃん、復活ー!

「傭兵呼び〜!」

 これを何回くりかえしたことだろうか?
 銀ちゃん、あきらめないな。
 一回で傭兵呼び、三百万も払うからさ。あんまり呼びたくないんだけど。

「ああー! せっかく拾ったお金が三千万も減ってしまったー!」
「所持金を銀行に預けないと、傭兵呼びの金額を減らせないですもんね」
「そうなんだよ。銀ちゃん、しつこい!」
「あのゴーレム。何かを守りたいんじゃないですか?」
「あっ、そうか。ゴーレムって何かを守るために造られるんだもんね」

 僕らはまわりをキョロキョロしてみた。
 ん? もしかして、アレか?
 銀晶石巨兵の背後に、布でくるまれたミイラみたいなものが置かれている。
 台車に載せられて、今にも運びだされようとしていたみたいだ。

 僕らがそれに近よろうとすると、銀ちゃんはフルスイングアームアタックをかましてくる。

「やっぱりそうだ。アレを守ってるんだよ」
「そうですね。いったい、何を守ろうとしてるんでしょうね?」
「あの状態、誰かが持ち去ろうとしたんだよね? ベベロンさんじゃないかな?」
「僕もそう思います」

 つまり、ベベロンさんがゴーレムの大切なものを盗もうとしたから、怒って反撃してきたんだ。
 僕らのこともドロボーだと勘違いしてるんだな。

「銀ちゃん! 僕らは君の大切なものを盗んだりしないよ。ベベロンさんをつれだしたいだけ。だから、もう戦うのよそうよ?」

 銀ちゃんは聞いてくれない。
 フルスイングアームアターック!
 まあね。今までさんざん三百万ダメージくらわせてきたんだから、怒るよね。

「腕でさわれないように、かーくんの『傭兵呼び』の直後、両腕だけ隔離してしまったら、復活できないんじゃないですか?」
「そうだね。ミダスタッチを無限にできるんだとしたら、僕の所持金もさすがに、いつかは底をつくし」

 話していたときだ。
 うーんと、うなり声をあげて、ベベロンさんが目をさました。そう言えば、この人、カンオケになってなかったから、完全に戦闘不能にはなってなかったんだな。

「あっ、くそ! ゴーレムめ。アイツさえいなけりゃ、あの像が運びだせるのに」

 僕は思わずたずねた。

「像ですか?」
「そうだよ。そりゃもうキレイな女の子の像なんだ。全身が銀晶石でできてるんだぜ? あれなら高く売れる」

 うーん。欲に目のくらんだ人間って、みにくい。
 それにくらべて、自分が何回こわれても、必死に像を守ろうとするゴーレムのなんてけなげなことか。

 僕はため息をついた。
 この人を助けにきたんだけど、なんか、ほっとけばよかったかななんて思ってしまう。だけど、この人のことを心配して待ってる家族がいるんだよな。

 しょうがない。
 僕はケロちゃんをダッコして、ベベロンさんに近づいていった。

「ケロちゃん。なめちゃっていいよ」
「ケロケロ〜!」

 ベロンと伸びるカエルの舌。
 ベベロンさんは石になった。
 悪いけど、街に帰るまでそのままでいてもらおう。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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