第299話 世界革命を小説で

文字数 1,255文字



 これまで僕らの装備できるものは、数が限られていた。
 かぶと、よろい、盾、ブーツ。
 武器は人によって一つか二つ。二つは二刀流ね。二刀流の人はかわりに盾が持てない。アンドーくんだ。
 それと装飾品が二つ。

 でも、想像してみてほしい。
 誰も裸の上にそのまま、よろいなんて着ないよね? 絶対、肌着的な何かを着るはずだ。
 装飾品だって、なんで固定で二つなんだ?
 だって、腕輪二つつけてたって、ネックレスはつけれるし、ピンバッチとかなら、もっとジャラジャラつけることができる。
 女の子なんかさ。ヘアゴムやリボンは装飾品じゃないのか?
 コーディネートとしてアリかナシかかを別とすれば、あれやこれやで十や二十はつけられるはず。だって、指輪を全部の指につけるだけで十個いくしね。

 もちろん、際限なく装飾品をつければ、あまりにも僕らが強くなりすぎて、モンスターとのバランスが悪いってことなんだろうけど。
 じっさいのゲームなら、それで納得できる。ゲームバランスを保つためだねぇ、でいい。
 だけど、ここで現実に暮らしてる人にとっては納得いかない変なルールなんじゃないのかな?

 というわけで、僕はスマホをとりだして、ポチポチッとな。
 蘭さんが三村くんの試作品を身につけたところから書きなおした。


 ***

「あッ。ほんとに数値上がりますよ! よろい下なのに防御力10%アップする。それにMP吸収効果も、たしかにありますね!」

 蘭さんのステータス画面を見ると——おおーっ! ちゃんと、よろい下っていう項目が装備品の欄に増えてる。

 それに、見間違いじゃないかと目を疑ったが、つけられる装飾品の数が三つになってて、一つは空欄になっていた。

「あれ? ロラン。装飾品、三つつけられたっけ? 前は二つだったような?」
「ああ、それは勇者のマスターボーナスの一つです。装飾品枠一つ増ってボーナスです」
「そうなんだ。なら、天使のアミュレットと流星の腕輪のほかにも、もう一つつけられるね」
「そうなんです。何がいいか考え中です」

 ふふふと笑ったのは三村くんだ。

「そう思ってな。これも作ったったで」

 三村くんはあざやかな真紅のマントをかざした。

「炎のシリーズと同じ素材で作ったんや。炎系のブレス攻撃を50%の確率でかわしてくれるで。防御力も15やし、装飾品としては、まあまあやろ」

 蘭さんはその炎シリーズの帽子、手袋、ブーツをまとってるから、マントを羽織ると赤色が全体でとてもいい比率。見ためも整ってる。

「よろい下は洗いがえも含めて三つは欲しいですね」
「いいね。買ってあげるよ」
「ほなら、合計四点で二十万や」
「はいはい。二十万ね」


 ***

 よし! 書けた。
 書けたってことは効果があるはずだ。
 得意技のランク制限にひっかかるときは、そもそも書きこめないからな。

 僕がスマホをミャーコポシェットにしまうと、蘭さんが嬉しそうに声をあげた。

「あっ、ほんとに数値上がりますよ!」

 へへへ。やったね。
 これで世界に革命が起きたぞ。
 今この瞬間、世界に防具が一つ増えたわけだ。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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