第314話 ボイクド国からミルキー国へ

文字数 1,934文字



 火竜がよこたわったあとの門には、もう誰も守る者がいない。
 僕らは勝手に扉をあけはなち、馬車をつらねて国境を越える。

 越境だ〜!
 これって密入国なのかな?
 ドキドキ。
 少し怖くはあったけど、僕は火竜に勝った勢いで、どこかワクワクもしていた。

 ところがだ。
 そのとき、急にワレスさんの目が青く光った。

「誰かに見られている。国境沿いに魔法の結界が張ってあったようだ。侵入者があれば、術者に伝わるように」
「えーと、つまり……」
「おそらく、悪のヤドリギだろうな」
「ヤドリギ……」

 まあ、それもそうか。
 火竜に守らせていたとは言え、侵入者に対して、なんの用心もしてないはずがない。

「さあ、もう、自分の馬車に帰れ。ここからは何が起こるかわからないからな。油断するなよ?」
「は〜い」

 僕はさっきの戦闘のあと、テンションが上がっちゃって、馬車の外をウロウロしてた。こういうとこが子どもみたいと思われてるんだろうなぁ。
 ああ、ぽよぽよ。

 ワレスさんに注意されたんで、小銭(十億円)を拾いながら自分の猫車に戻る。車のなかに入ると拾えないからね。ものの三百メートル歩くあいだに二百億だ。

 猫車に乗りこんで三時間。
 いくつかの村や集落を通りすぎた。
 敵地に侵入してきて、モンスターの群れに襲われるんじゃないかとか、どこもかしこも廃墟になってるんじゃないかとか、よくない想像もしてたんだけど、見たところ、ふつうの農村。
 人間もあちこちに見かける。
 畑仕事をしながら、こっちにむかって手をふる人さえいる。

「なんか、ぜんぜん平和そうだよねぇ。アンドーくん」
「そげだね。ちょっとホッとしたわ。どげなっちょうことだらかと思っちょったけん」

 そうだよね。アンドーくんにとっても祖国だもんね。
 逃げていった池野くんも、今ごろはこの国のどこかに戻ってきてるのかなぁ?

 景色だけを見ると、ボイクド国となんら変わりない。
 でも、ワールドマップに出現するモンスターは、だいぶ強いようだ。
 先頭のワレスさんたちの隊が戦ってくれるから、僕らは数分のあいだ待ってればいいんだけどさ。

 移動中、僕はスマホをひらいて、ここまでの経緯を小説に書いておく。
 あと、みんなの数値もこっそり上方修正しておく。毎日はムリでも、ヒマなときにはやっとかないとね。

 僕らの今のステータス。
 修正済みのやつだ。
 決戦前に記しておこう。
 僕はさっき書いたから置いといて。

 蘭さん。レベルは27。
 HP255、MP130、力99、体力77、知力126、素早さ185、器用さ130、幸運140。

 三村くん。レベル26。
 HP290、MP57、力162、体力135、知力62、素早さ57、器用さ158、幸運42。

 アンドーくん。レベル27。
 HP260、MP90、力155、体力128、知力98、素早さ128、器用さ100、幸運60。

 スズラン。レベル27。
 HP160、MP240、力48、体力53、知力160、素早さ101、器用さ85、幸運83。

 ぽよちゃん。レベル27。
 HP160、MP80、力82、体力81、知力108、素早さ150、器用さ124、幸運152。

 これらの数値は、全員、直近のレベルアップ後に全ステータスにプラス10してある。けど、ぽよちゃんについては、さらに説明が必要かも。
 ぽよぽよ草は一定量食べると、レベルアップ時のステータス上昇率が1.5倍になるようだ。なので、レベル27になるとき、伸びがよかった。

 クマりん。レベル23。
 HP150、MP30、力130、体力128、知力58、素早さ66、器用さ78、幸運65。

 たまりん。レベル24。
 HP75、MP116、チカラ30、体力35、知力182、素早さ40、器用さ50、幸運25。

 バラン。レベル26。
 HP310、MP35、力103、体力165、知力80、素早さ112、器用さ82、幸運38。

 ケロちゃん。レベル19。
 HP90、MP32、力50、体力50、知力68、素早さ87、器用さ30、幸運50。

 シルバン。レベル15。
 HP230、MP0、力110、体力140、知力35、素早さ30、器用さ30、幸運65。

 シルバンに関しては、レベルアップしてもMPがいっさい増加しない。MPがないと不便なので書きこもうとしたけど書けなかった。

 モリー。レベル12。
 HP106、MP120、力22、体力35、知力23、素早さ30、器用さ28、幸運43。

 これが今の僕ら全員の数値。
 僕はそれに三から五くらいの数値をチョコチョコ足していく。
 とくに蘭さんは勇者だし、命を狙われる機会が多いだろうから、全部に十ずつ足していく。

 これで、どうにか決戦に勝利したい!
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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