第29話 ミノタウルス戦! 1

文字数 1,201文字



 大きな(おの)を手に、立ちはだかるビースト。
 牛の頭に人間の体。
 しかも、超マッチョ。
 身長は三メートルくらいか?
 その姿は大昔、地獄の鬼と言われた牛頭(ごず)そのものだ。

「ひえー。見るからに怖い」
「大丈夫。僕には魅了もあるし、力をあわせれば、必ずやれます」
「おう。かーくん、やったろや」

 地の底からわきあがる音楽。
 あっ、いつもと違う。
 なんか激しいぞ。
 これが固定ボス戦のBGMか。
 ボス戦って途中で戦闘離脱できないよね? 勝つか、負けるか。そのどちらか一つ。
 い、行くぞ……。

 ミノタウルスは余裕の表情で微動だにしない。というか、頭が牛だから、イマイチ表情がわからない。

 と、いきなり、蘭さんがニコニコしながら両手で可愛いガッツポーズを作った。
「みんな、がんばろ〜!」

 蘭さん、こんな大変なときに何やってんだ?
 あれ? いや、待て。なんか体の底から力が湧いてくる。やる気が倍増したぞ。

 うん? そういえば、さっきのあの蘭さんのポーズ、どっかで見たような? それも、つい最近だ。

 蘭さんはもう一回、同じポーズで同じセリフを言った。
「みんな、がんばろ〜!」

 ああッ! あれか。
 蘭さんの呪文に、『みんな、がんばろ〜o(^o^)o』っていうのが、あったっけ。
 この力がモリモリ湧いてくる感じ。
 たぶん、攻撃力をあげる補助魔法だ。それも、“みんな”って言ってるから、グループ全員にかかる魔法。二回め言ったから、重ねがけもオッケー。

 よーし。これなら、ミノタウルスだって倒せるかも。

 どうでもいいけど、このゲームってターン制なんだけど、素早さの数値によってターン内で二回攻撃も可能なんだな。
 無意識だったけど、僕もスライム戦のとき、一ターンに二、三回、スラちゃん叩いてたっけ。
 蘭さんは素早さがとびぬけてるから、重ねがけできたんだ。

 蘭さんの攻撃は今ので終わりだ。その場待機の挙動に変わった。

 次は三村くんか。
 三村くんの数値は——と。
 えっと……HP180、MP25、力85、体力70、知力35、素早さ32、器用さ73、幸運20。
 これまた、めっちゃかたよってる!
 これ、どう見ても戦士の数値なんですけど? 商人でコレってことは、戦士に転職したら、問答無用に強いんじゃないの? 戦士にしては、やたら器用なのが不思議だけど。

 あれ? 素早さの数値、僕より低くないか? じゃあ、なんで攻撃の順番、僕より早いんだ?
 あっ! バンダナだ。装備品の風切るバンダナっていうのが、素早さの数値を上げてるんだ。素早さプラス50は大きいな。

「行くで!」

 三村くんのブーメランがうなる。
 ミノタウルスの弁慶の泣き所を直撃だ。逆にこんな低空飛行で、よく飛ばせるな。感心だ。

 さて、いよいよ、僕の番だぞ!
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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