第181話 バケモノというか
文字数 1,455文字
コレか。
こいつが平原のバケモノか。
バケモノ……?
見ためは、ものすっごく大きなトラジマの猫だけどね?
まあ、全長十八メートルは大きいよね。そのうち尻尾の長さが八メートルくらい。
「なんで、猫がこんなに大きいんだろ?」
「化け猫だない?」
「なるほどぉ。サイズ的にノームが獲物としてちょうどネズミっぽいんだろうね」
僕らはコイツの獲物にしては、ちょっと大きいから、なかなか寄ってこなかったのか。
音楽が切りかわった。
でも、むしょうにメルヘンチック。
この曲には聞き覚えがある。
コビットたちと戦ったときだ。
ということは、もしかして楽勝なのかな?
野生のバケトラが現れた!
戦いますか。
「じゃあ、いつもどおり、アンドーくんは、みんな巻き。たまりんは小悪魔のハープを使いつつ、ピンチのときには回復魔法で。ぽよちゃんは……」
どううしようかなぁ。
ためるだと、バケトラの獲物にされそうなんだよな。ぽよちゃんもノームたちのように、バケトラにとってのネズミサイズ。
「とりあえず、聞き耳ね」
「キュイ」
ふむふむ。ぽよちゃんのお耳がピクピクすると可愛いって? それはもうわかってる。
違う。違うぞ。かーくん。
ぽよちゃんのお耳がピクピクすると、バケトラの行動パターンが読めた。
けど、なんなんだ?
じゃれる、しかないんだけど?
「じゃれるって何するんだろ? 数値はHP以外、平均的でそんなに高くない。HPだけ高いタイプね。ま、いっか。ちょっと戦ってみよう。ぽよちゃんは通常攻撃ね」
「キュイ!」
なので、さっそく、ぽよちゃんの攻撃二連続!
妖精のネイルがキラキラと鱗粉のようにきらめくと、バケトラの目の色が変わった。胸毛にバッテンの傷をつけられたのに喜んでる。
フニャフニャ言って、お尻を持ちあげフリフリしてる。興奮してるな。これは、うちのミャーコがネズミを見つけたときの仕草。やっぱり、ぽよちゃんに目をつけたか。
ぽよちゃんが食べられちゃうと大変だ。なんとか、攻撃をかわせないものか。
そうだ。さっき、ぽよちゃんは“はねる”が使えるようになったんだよね?
はねるって、けっきょく、どんな技なんだ?
気になったときは見るにかぎる。
ステータスはレベル20になってる。
HP105、MP46、力42、体力44、知力60、素早さ92、器用さ70、幸運100。
マジックは前と同じだ。
得意技のはねるの文字が明るい。はねる(ランク1)だ。
長押しすると、こう書いてあった。
とびはねて自分の素早さを極限まで上げる。回避率と素早さが50%上昇。かさねがけ可能。
「あっ、回避率が上がるんだ。ぽよちゃん、次のターンは、はねるを連続して」
「キュイ」
しかし、今のターン、ぽよちゃんの行動は終わった。
アンドーくんが「みんな巻きで行こう〜」と叫んだので、僕は精霊王のレプリカ剣を水平ににぎって、バケトラの背後にまわった。お尻フリフリしてる、うしろ足を狙う。サクっと行ったあと、ボーッと炎が勢いよく燃えあがる。
「ニャッ!」
あっ、ごめん。
猫いじめるの、かわいそうだなぁ。
でも、ノームが食べられるのもかわいそうだし。
世の中ってのは、うまくいかないもんだね。ふっ。
たまりんは小悪魔のハープでポロポロと音階を奏でる。耳の奥をひっかくような音がする。不快なような、そのくせ快感のような。小悪魔っぽい音だ。
バケトラはますます興奮した。
ああ、これは海鳴りのハープのほうがよかったかな?
バケトラの攻撃。
じゃれる!
……これが、“じゃれる”か?