第81話 フェニックス戦! 1

文字数 1,494文字


 回復の泉の前の細い道をあがると、やがて山の頂上にたどりついた。
 そのさきに鳥のクチバシみたいにつきだした崖があった。

 いる。
 フェニックスだ。
 翼竜みたいに大きな鳥が、朝日をあびて、そこにいる。
 赤とピンクのちょうどあいだくらいの朝焼けを背景に、大きく翼を広げた巨鳥は、怖いというより荘厳だった。
 全身が金色(こんじき)に光って、黄金細工のよう。

 これは神鳥だ。
 神の世界の生き物。
 ただの鳥とは思えない。

 でも、なんだか気が立ってるみたいに見えるな? なんでだ?

 ドシン——と足をふみならし、ケーーーーーーンと空も割れそうな雄叫びをあげている。

 ん? 足元に見えるのは巣だろうか?
 なんか干し草みたいなのが積みあげられてるけど。
 巣のなかは……と、からっぽか。

 奇声を発する神鳥にむかって、蘭さんは走りよっていった。
 ああ、蘭さん。危ないよ。

「お願いです。神の鳥よ。どうか、あなたの羽を一枚だけ僕に授けてください。まだ死んではならない人が死にかけています。このとおり、お願いします」

 フェニックスの前にひざますき、蘭さんはこうべをたれる。
 そういえば、神獣とかって人間の言葉が理解できるんだよな?
 もしかして、戦わなくても貰えるかな?

 なんて都合のいいことを考えたものの、やっぱり、そうはいかなかった。
 いきなりボス戦用の音楽にBGMがチェンジ。

 フェニックスは翼をひろげ、甲高い鳴き声をあげながら、襲いかかってきた——

 そうだよね。
 そうなるよね……。


 *

 なんでかわからないが、フェニックスは最初から怒り狂ってた。
 もともと人間と言葉をかわせないのか、それとも憤激のせいで我を忘れてるのか知らないけど、礼をつくして話しあおうとする蘭さんを、いきなり大きな翼で払いのける。

 あッ。蘭さんのHPがいっきに70も減ってしまった。つ、強いな。フェニックス。

 ちなみに久々にちゃんと見た。
 蘭さんのステータス。
 レベルは20だ。
 HP176、MP75、力56、体力37、知力77、素早さ121、器用さ84、幸運92。
 あいかわらず、力と体力が女の子なみ。素早さがとっくに百超えてるよ。
 ん? 蘭さんの魔法、増えてるぞ。

 死なないでー?( ;∀;)

 これって、もしかして蘇生魔法なんじゃ?
 死なないでー? って、クエスチョンマークがついてるってことは、確率で蘇生したりしなかったりするやつだ。
 そうか。勇者だもんな。
 この魔法があれば、長期戦の戦闘が可能になる。
 僕が回復役にまわって、なるべく蘭さんのMPを温存しないとな。

 僕らのターンだ。
 この戦いはフェニックスの先制攻撃で始まった。そういう演出のようだ。

「みんな、がんばろ〜」

 いつもの蘭さんの呪文。
 それが二回くりかえされる。
 そのあと、鞭攻撃が二回。
 さほど素早い敵じゃない。
 ただ、蘭さんの攻撃でさえ、あんまり効いてる感じがしないんだが?
 もしかして、このボス、HPがめちゃくちゃ高いんじゃ?
 敵のステータスを見ることができないんだけど、どうも……心配だなぁ。

 次は三村くんの攻撃。
 僕と三村くんは、まだ武器を交換したままだ。だから、三村くんは破魔の剣を持って、フェニックスのふんばった両足のあいだに入っていった。
 ぷすりとつき刺すんだけど、針山に刺した針って感じだ。
 フェニックスはぜんぜん、痛みを感じてさえいない。

 さて、いつものように、ぽよちゃんがためる。
 次は僕の番だ。
 僕は鉄のブーメランをなげた。
 ほかにすることない。
 いちおう当たることは当たる。的が大きいから外すことはないんだけど……き、効いてない?
 僕らの攻撃、効いてない?
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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